第8章 落日
<敵が姿を現し追撃を開始>
会場のアナウンスが
「今、目の前にいるプロヒーローは、君たちを助けたりはしない」と告げている。
<現場のヒーロー候補生は>
<敵を制圧しつつ>
<救助を、続行してください>
会場のアナウンスが
「さあ、どう動く!?ヒーロー!!」
「護り、戦え」と告げている。
「皆を避難させろ!」
「真堂さん!」
大挙してくる仮想ヴィラン達。
傑物学園の真堂が、身構えていた緑谷の横を駆け抜け、両手を地面に叩きつけた。
「近付かせない!!」
一次試験で雄英生を無理やり分断させた「揺らす」個性で、彼は地面を振動させ、戦線を作ると同時、敵の足場を崩れさせた。
個性の反動で、真堂が動きを止めたのは、わずか1秒のインターバル。
しかし。
「温い」
ヒーローチャートのトップ10を冠している現役のプロヒーローに対し、1秒間も隙を見せてしまえば最後。
真堂は、目の前に急接近してきたギャングオルカの超音波をモロに喰らってしまい、ガク、とその場に倒れこんだ。
「この実力差で殿一人…?なめられたものだ…!」
ギャングオルカが不愉快そうに戦線を突破し、救護所へと向かって歩き出そうとしたその足に向かって。
最初の爆発から1分も経たないうちに駆け付けた轟が、ギャングオルカの死角から氷結攻撃を仕掛け、彼を牽制した。
「ふっきィイイ飛べえええっっ!!!」
轟の到着から一瞬遅れて。
士傑高校の夜嵐が、疾風攻撃を仮想ヴィランめがけて、ぶち当てた。
「敵乱入とか!!なかなか熱い展開にしてくれるじゃないっスか!!」
ほぼ同じタイミングで襲撃現場に到着した轟と夜嵐。
轟は夜嵐の姿を確認すると、ムッとした顔をして、口を横一線にきつく結んだ。
対する夜嵐は思ったことを口にせずにはいられない性分なのか、轟の耳に届く声量で、わざわざ「あんたと同着とは…!」と敵意むき出しの言葉を口にした。
(…こっちのセリフだ)
「…おまえは」
売り言葉に、買い言葉。
「救護所の非難を手伝ったらどうだ。個性的にも適任だろ。こっちは俺がやる」