第7章 エンデヴァーの息子さん
「いやァ申し訳ないっスけど、エンデヴァーの息子さん」
「俺はあんたらが嫌いだ」
「あんたの目は」
「エンデヴァーと同じっス」
ーーーキミが
ーーーエンデヴァーの息子だから
エンデヴァーへの嫌悪を滲ませた夜嵐の声と。
エンデヴァーへの好意を含んだの声が、被って聞こえた。
踵を返して立ち去る夜嵐とは対照的に、轟は面食らったままその場に立ち尽くし。
閉口するしかなかった。
(…親父の…目?)
ゆらり、と。
瞬間的に、彼の周囲の空気が冷えた。
その雰囲気の変化に気づいたが、轟の名前を呼ぼうとした時。
けたたましいサイレンが鳴った。
<敵による大規模破壊が発生!!!規模は〇〇市全域、建物倒壊により傷病者多数!>
目良により告げられた最終試験の想定内容。
アナウンスが鳴り響き、通過者控え室の壁と天井が、再び大袈裟に展開される。
<道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!!到着する迄の救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う>
採点の基準は一切明かされず。
まず、自分は何をすればいいのかも。
自分はどこへ行けばいいのかも。
誰も、何も、教えてくれない。
未だ世界を知らない学生の身で、社会に出たいというのなら。
人の生死に関わるような資格の所有を、認めてほしいというのなら。
それぐらい自分で分かって当然、できなきゃ困る。
たった一つだけ。
ヒーローの大前提、行動指針を述べるとするなら。
<一人でも多くの命を救い出すこと!!!>
ヒーローがヒーローたる所以。
その言葉を聞き終わると同時。
総勢100名のヒーロー志望が一斉に駆け出し、飛び出した。