第7章 エンデヴァーの息子さん
腐ってもNo.2。
昔から、アイツにはある程度のファンがいた。
この国の二番手の割には少なすぎる支持層だったとしても、「エンデヴァーの息子」というだけで、憧憬の視線を向けてくる奴も、憎悪の念を送ってくる奴も、たくさん会ってきた。
『…私…昨日、伝え方間違えた。ごめんなさい』
は、きっと。
前者なんだろう。
別に俺は怒ってなんかいないのに。
は申し訳なさそうに。
そんな言葉をかけてきた。
「…申し訳ねぇと思うなら、初めから言葉には気を付けろよ」
怒ってない、はずなのに。
何でだ。
口から出ていくのは、を詰るような言葉ばかり。
なぜか、刺々しい物言いをしてしまう。
「…何も知らねぇくせに」
(……何でだ)
落ち着かない。
何も知らねぇくせに?
当たり前だろ。
出逢って数日。
まだ何も話してない。
知らなくて当たり前なんだ。
八つ当たりなんかしてんなよ。
『昨日言いたか「、悪い」
「黙っててくれ。気が立ってる」
こんなこと
言いたくないのに、なんで
二人の周囲の空気が、一瞬で凍りついた。
は言いかけていた言葉を押し留め、言われたとおりに口を閉ざした。
数秒間の沈黙の後。
遠慮がちに、彼女は轟が座っている席から二席分空けた遠い椅子へと腰を下ろした。
(……何してんだ)
自責の念に駆られた轟が顔を上げた時。
遠目からずっとこちらの様子を窺っていたらしい夜嵐と、目が合った。
キツい視線を浴びせてくる夜嵐は、パッと轟を視界から外し、の方へと進み出た。
「あの!」
『……はい。なんでしょう』
「あんた、俺と友達になってくれないか!?」
『え』
「不束者ですが、よろしくお願いしまっス!!!」
『…決定なの?よろしくお願いします』
「やったァ!!じゃあまず名前を教えてくれ!!」
『…です。えっと…夜嵐くん』
よろしく、という言葉の後、が夜嵐の方へ片手を差し出した。
夜嵐はその手をジッと見つめた後、一気に赤面して。
嬉しそうに、満面の笑みで握手をした。