第49章 選んだ道
時間は。
ほんの、二、三秒ほどの出来事だった。
荼毘は、そのまま。
片手に握ったネックレスを引っ張り、その手のひらの熱で、ネックレスの一部を溶かし切った。
今、自分の身に起こっている出来事に。
が対応できず、目を見張った。
荼毘は彼女の瞳を見つめて。
笑いながら言った。
『ーーー燈…』
「ごめん。ムードも何もなくて。焦凍に盗られんのだけは嫌だった」
じゃあな、と。
荼毘はイタズラっ子の様な笑みを浮かべて。
最後に言った。
「もう死んだりすんなよ」
「笑おうぜ」
「人は笑う為に生きている」
そこから、死柄木率いる敵連合の撤退が始まった。
遠くの街で暴れていた脳無に、電波で指示を飛ばした死柄木は、自身の撤退地点に数十もの脳無を集め、トカゲの尻尾の様にマキアと、コンプレスも切り捨てた。
動けるものは死柄木を追おうと力を尽くしたが、ハイエンドの脅威と負傷者が多数に上った為、数十キロ先からの追跡は不可能となった。
多くの者が散っていった。
同日、夜。
タルタロスが襲撃に遭い、多くの脱獄者が逃げ出した。
戦いの日から二日が経過し、夕方。
ホークスが、に会いに来た。
病院のベッドに座る彼女の姿を見た時。
ホークスは目を見開き、しばらく。
病室の出入り口から、動き出せなかった。
「……火傷で、声が…あんまり…出ない」
『いいよ、無理に声出さなくて』
「……でも、話し、たい」
喉の痛みに咳き込むホークス。
彼の背を、彼よりも歳上に見える容姿になってしまったが、さすった。
彼は十分ほどの間。
言葉を発さずに、ただの病室にい続けた。
「……」
考えて、考えて。
言葉が見つからずに。
「…ごめん……本当に、どうやって償ったらいいか……毎日、考えて、るんだけど……」
ホークスが頭を下げた。
は首を横に振って、『謝らなくていい』と言った。
「……ごめん……」
『大丈夫』
「…大丈夫じゃ、なか……一生をかけて、償う」
『キミも被害者みたいなものだから』