第6章 他校生とのお付き合い
「あっ、ホークス!!!」
咄嗟に口をついてでた夜嵐の言葉に、リンゴジュースをコップへ注ごうとしていたが動きを止めた。
「そのジャケット、ホークスをイメージしてる!そうっスよね!そっくりだ!!」
は夜嵐が言うとおり、ホークスそっくりな厚手のジャケットを羽織っている。
しかし、そのジャケット故に、なんだか彼女のコスチュームは、サイズもトータルもアンバランスさが否めない出来になっている。
彼女の身体のラインに沿っている黒いインナーコスチュームは、異性からしてみればとてもとても煽情的なものだが、それは同時に、機能性の面で見れば、この上ない合理的なデザインでもある。
デザイン性も機能性も全て度外視した形で、あとから付け足したかのような大きすぎるそのジャケットは、すっかりの身体を包み込み、異性からの邪な視線をシャットアウトする役割を果たしている。
『……あ、えっと…そうなの』
「リスペクトっスね!!彼は熱いヒーローっス!!!そのジャケット、再現度すごい!!! カッコいい!!」
『うん、かっこいいよね。私ホークスのファンなの』
「自分もホークス好きっスよ!!次のランキング、支持率一位は間違いないっス!」
うん、うん、と頷きながら、はテーブルに並べられたお菓子を黙々と口に運び続け、永遠と話しかけてくる夜嵐に相槌を打ち続けた。
何百回か頷き続けた頃。
ようやく他の通過者達が控え室へと姿を現し始めた。
「お疲れ様っス!!そのコスチューム、スタンプマンに似てるっスね!!」
夜嵐は人が一人増えるたび、臆することなく声をかけにいく。
対しては、その容姿ゆえに多くの異性の注目を浴びていながら、全く誰にも話しかけようとはしない。
彼女が黙々と、無心に食べ物を口へ運び続けて、十分後。
ふと視線を入り口へと向けた時、ちょうど知った顔が現れた。
はハッとして、甘いものに伸ばしていた手を止め、小走りで彼の方へと駆け寄って行った。
『轟くん』
「…」
お疲れ様だよ、と労う彼女の声を聞き。
夜嵐が視線をそちらへ向けた。
なんだかようやくホッとしたかのような彼女の横顔と、何年も何年も嫌悪し続けたプロヒーローの息子を眺め。
夜嵐は、あからさまに顔をしかめた。