第6章 他校生とのお付き合い
(ウワーーーーッ人違いだったー!!!)
小走りで駆け寄ってくる美少女の姿。
彼女の容姿が鮮明になるにつれ、顔を真っ赤に染め始めた夜嵐は、自身の手に持っていたカードキーを、激しい腕の震えにより取り落とした。
『あ、何か落としたよ』
「えっ、あっ、やっ、スイマ、スイマセン!!!」
『えっ?どうして謝るの?』
「自分拾うんで!!!大丈夫っス!!!」
はかがみ込み、地面に落ちたカードへと手を伸ばす。
すると、その様子を見て、夜嵐は小さなつむじ風を起こし、それをふわりと宙へ浮遊させた。
しゃがんだ状態のが顔を上げ、じっとその黄昏色の瞳で夜嵐を見つめる。
『すごい個性。風が使えるの?』
微かに、彼女が口角を上げた。
その微笑を直視してしまった夜嵐が、ぐらりと背中から斜め45度に倒れかかったが、無理やり風で身体を支え直し、直立へと戻ることに成功した。
「つ…使えます…」
『ターゲット、それで外すの?借りてもいいかな』
「アッ、はい、こちらになります!!!」
『………そんなに緊張しなくても』
私、きっと貴方と同い年だよ、と。
かしこまった話し方をする夜嵐に対し、彼女がそんな言葉を口にした。
(…え、同い年?)
そんなことがあるのだろうかと、夜嵐は耳を疑った。
あまりにも彼女は、自分と比べて大人びて見える。
長い艶やかな銀髪と、黄昏色の瞳を持つ彼女。
真っ黒なコスチュームに身を包み、ケーキを立食しているだけなのに、彼女の立ち姿はまるで周囲の空気を彩るかのような華やかさを滲ませている。
(…やっぱり、朝思った通り)
今まで出会った女子の中で、彼女はとても。
「あ、あの…」
とても、熱い。
『…はい』
「な………なま、…名前を……」
名前を知りたいだけなのに、言葉が出てこない。
彼女の身体に沿った黒いコスチュームを遠目で見て、同門の現見ミィだと勘違いでもしていなければ、こんな好機が訪れることはなかっただろう。
初対面で話しかけることすらハードルに感じた女生徒相手に、二人きりでの会話が成り立っているのだ。
なんとか次に繋げたい。
ついでにこんな魅力的な女子と自然に話せていたエンデヴァーの息子が妬ましい。
夜嵐が意を決して口を開いた時、彼女は近くの椅子にかけていた、自身のジャケットに腕を通した。