第49章 選んだ道
なんとなく、わかってた。
鷹見くん、私のサイン、気づいているのに、気づかないフリをしているなぁって。
なんでかな、どうしてかな。
伝わりづらかったのかな。
タイミングが悪かったかな。
いくつもいくつも理由を探して。
気づいた。
(あ、そっか。どうやっても確証がもてないんだ)
私が味方だと、証明する方法がない。
証明してくれる人がいない。
二人とも潜入捜査の真っ只中で、一人は翼にカメラをつけている。
どうやら公安は私を消したいようだし、となると、方法は一つしかない。
彼は世界の命運を、私の肩に乗せるしかない。
もし私が反乱分子であれば。
その場ですぐにゲームオーバーだ。
(………それは)
それは、きっと無理だろうなぁ。
そう思った。
来る日も来る日も彼の信用を勝ち取れず。
毎日毎日眠れない日が続いた。
担任に顔色を心配されるほどには、思い詰めていた。
ホークスの視線が日に日に冷たいものへと変わっていく。
彼は捕食対象を見つけた鷹の様な目をしたまま、私のそばで常に目を光らせるようになった。
なんだかとても。
とてもがっかりした。
(……好きだって言ったくせに)
彼の翼を燃やしたことをまだ根に持っているのだろうか。
カメラを焼き切る為の演技だったのに、それすらまともに伝わらない。
あぁ、このまま
彼に消されてしまうのだろうか
自らの死を予期して、途方に暮れていた。
新年が明けて。
轟くんと二人で新幹線に乗ったあの日。
溜め込んだ不安が流れ出る様に言葉を紡いだ。
周りから変な目で見られても。
轟くんはただじっと私を見つめて、話を聞いてくれた。
人を燃やしたいと思うという私の異常性ですら。
最後まで話を聞いてくれて。
挙げ句の果てには。
「ありがとう」
「我慢してまで」
「燃やさないでいてくれて」
『……なにそれ。燃やされないってわかってるような言い方だね』
彼は平然と、言った。
「お前は、優しいやつだから」