第48章 原点
生きづらい毎日だった。
この世界の全てを、燃やして、消してしまいたいのに。
鷹見くんの隣に立っていたくて。
自分の心に蓋をした。
ヒーローを目指す、と決めた。
生きづらい毎日だったから。
自分に正直に生きようぜ。
6月に偶然出くわした指名手配犯が言っていたその言葉をきっかけに、しっかりと閉じていた蓋が、壊れてしまった。
私は。
「自分」のこともよく知らないし。
「正直に」生きたこともない。
『…カルラ』
その指名手配犯が羨ましくて、言い返した。
ーーーヴィランが、何を言ってんだ
笑ってしまう。
今となっては、彼も、私も。
この世界の敵なのに。
今、思い返せば、彼に躍起になって言い返した、あの日から。
私の人生は、徐々に狂い始めた気がしている。
『……カルラ、私を』
自分の薄暗い人間性を知っていくたび。
自覚させられたことがある。
きっと、本来、自分が向いているのは。
ヒーローの味方なんかじゃなくて。
きっと。
きっと。
『蘇らせて』
《ーーーそう簡単に使える力じゃない。代価にお前の寿命をもらう。これで、甦りは3度目だ。次はない。死から時間が経ちすぎて、残り火がない。新しい灯火が必要だ。代価を10年以上もらう》
私の命を燃やして輝く火の鳥は、自分の命の源である私を心配するかのように。
そんなことを言った。
『ーーー……うん。でも、行かないと』