第48章 原点
私の体は燃えて、燃えて。
灰になった。
そして、私が気がついた時には。
数歳ほど歳をとった姿で。
その灰の中から、息を吹き返していた。
「君のお母さんの個性が欲しくてね。数年前、彼女と一緒に君を家屋ごと燃やした。すると、どうだろう。火事場泥棒に入ったホームレスが、焼かれた灰の中から、一人の子どもを発見したという噂を聞いた」
「最後に見た君の姿と、年齢が合わなかったから放っておこうかとも思ったんだけどね。「仮にもし、そうなら」実に素晴らしい個性だ。だから君に会いにきた」
「実に美しかった。弔に出会う前であれば、僕は喜んで君を受け入れ、育てたがっただろう!!けれど、すまないね。今僕が育てたいのは弔なんだ」
「君は素晴らしいものを見せてくれたね。ほんのお礼として、君のお母さんの「個性」を返してあげよう。なぁに、遠慮することはない!君のお母さんは凶暴な放火魔だったせいか、個性にもその殺人性が乗り移っていてね……僕の意志にそぐわない時に、勝手に悪さをすることがある。潜伏の邪魔になるんだよ」
この「ゴミ」、いらないから君にあげるよ。
嬉しいだろう?
君はゴミを集めるのが大好きじゃないか。
それに、娘に殺人性を譲り渡せるのなら、君のお母さんもきっと、このリサイクルを喜んでくれるだろう。
そうだ、君。
赤ん坊から急に歳をとったんだろう、そうだろう。
自分の名前も知らないだろうから。
僕が名付け親になってあげよう。
いやいや!お礼なんていらないよ。
名前を知る前に、君の母親を殺したせめてものお詫びだから。
君のお母さんは、と名乗っていたよ。
下の名前は、そうだな。
君を殺した個性を持っていた人間の名前をつけようか。
いい名前だろう?
君は、自分の死んだ灰から生まれてきたんだから。
男はそう言って。
私の額を鷲掴んだ。
「おめでとう、」
「君は生まれ変わったんだ」
必死に、逃げて逃げて逃げて。
半狂乱になって駆け出して。
道路に、飛び出した。
自分が宙を舞っていることにも気づかずに。
暴れて、暴れて。
地に落下して、頭を打ちつけた。