第48章 原点
荼毘、と。
エンデヴァーが彼を呼ぶ。
「酷ぇなァ……そんな名前で呼ばないでよ」
彼は、自身の頭に洗髪料落とし液を振りかけた。
「燈矢って立派な名前があるんだから」
荼毘から告げられる、轟燈矢の過去。
地獄の舞台の幕が上がった。
「俺は忘れなかった。言われなくてもずうっとお前を見ていた」
荼毘ーーーー轟燈矢は。
マキアの背から、の身体を引きずってくると、轟焦凍の方へと放り投げた。
焦凍がもつれる足で駆け出し、彼女の身体が地面に衝突する直前、彼女を抱き止めた。
氷のように冷たい彼女の身体。
燈矢は、焦凍の兄は、言っていた。
「…………?」
「やるよ、焦凍。お前の親友、なんだもんな?でも可哀想に、お前の大切な親友は、エンデヴァーと謀してやがったホークスが、殺しちまった!!!ひでぇ話だ!!せっかくの最高傑作にできた、オトモダチだったのに!!!」
焦凍は。
もう動かない彼女の身体を震える腕で抱きしめた。
「………嘘だ」
「嘘じゃねぇよ?焦凍、そいつは死んでる」
色を失った焦凍の瞳から。
涙が後から後から溢れ、止まらない。
燈矢は、その様子が面白くてたまらないというように、狂気的な笑みを浮かべて、血涙を流し始めた。
嘘だ、と。
焦凍が彼女を抱きしめて。
言葉を繰り返す。
まるで走馬灯のように。
焦凍の頭の中に、彼女との日々が思い起こされる。
「………嫌だ………」
「……嫌だ、……!!」
最悪な悪夢を見続けている。
あぁ、頼むから
夢なら早く、醒めてくれ。
「あぁあああぁあああああ!!!!!」