第47章 後ろの正面だあれ
あの時、ごめんね。
かごめちゃん、置きざりにしてごめんね。
お母さん達が言ってたの。
私がかごめちゃんのお家がある高架下に遊びに行っていることがバレて、役所の人たちに話をしにいくって言ってたから。
迷惑かけたくなかったの。
さよならも、何も言わなくてごめんね。
友達になってくれたのに、ごめんね。
『ヒミコちゃん、久しぶり』
「かごめちゃん!!」
山荘で、再会して。
嬉しかった。
またかごめちゃんと友達になれた。
「ねぇ、チウチウしていい?」
『いいけど、ヒミコちゃん。私の名前違うよ』
「そうなんだ!何て呼んだらいい?」
『。』
「へぇーカァイイ名前!どこでもらったの?」
『え?………どこでつけてもらったっけ。思い出せない』
ちゃんは、所々。
昔の記憶がないようだった。
一日、一日。
連合のみんなと過ごすうち、夢を見て、記憶を取り戻せてるって言っていた。
言っていた通り、毎日毎日。
彼女を取り巻く雰囲気が変わっていく。
聖火のように輝いていたちゃんの瞳は。
日に日に、影を孕むようになった。
私が知っているちゃんに、日に日に近づいていっているのがわかった。
「ねぇねぇ、ちゃん。記憶、どんどん戻っていったら、いつか本当の仲間になれるかな。本当のオトモダチになってくれる?」
ちゃんがヒーローの味方かどうかなんて。
正直どうでもよかったけれど。
私たちの味方でいてくれた方が、ずっと長く一緒にいられると思ったから、そう言った。
『…本当のオトモダチ?』
「うん!ちゃん、まだ公安のお仕事してるでしょ?私、わかるよ。ちゃんよりババ抜き、強かったでしょ」
『………。ババ抜き、強かったね』
「ね!そうだったよね!」
『なんで私が仕事中ってわかるの?』
「んー、なんとなく。ねぇ、オトモダチになってくれるよね?」
二人きりの秘密の話。
二人だけの、ナイショの話。
ちゃんは、楽しそうに笑って、笑って。
言った。
『……何を思い出しても、私は私のままだけど』
『ヒミコちゃんとは』
『友達だと思ってるよ』
『敵同士だったとしても、それは変わらないから』