第46章 荼毘に伏す
荼毘は、子どもながらに。
裏の世界で生きていく術を知っていた。
「…なぁ。お前の仕事って何」
『教えない』
「……」
何度聞いても。
どれだけ距離を詰めても。
お前は俺に、仕事の話をしたがらなかった。
親もなく。
子ども一人で。
空き家を占領し、最低限ながらの暮らしを営んでいる彼女の瞳はとても力強く。
今より数倍、常にギラついていた。
聞かなくとも、「ブローカー」とやり取りをしている時点で、裏の世界の住人だと、すぐにわかった。
ある日、彼女に内緒で。
「仕事先」について行ったことがある。
見ず知らずの、郊外のひっそりとした家に、彼女は入って行って。
数分後。
その家を全焼させて、外に戻ってきた。
家の外で待っていたらしい関係者らしき大人たちに、彼女は報酬をもらって、帰路についた。
「お前の仕事のことを知りたい」
『…珍しくよく喋るな』
「腕っぷしが強いことが関係してるのか?それとも炎の個性でこなせる仕事か?知りたい」
『………知って、どうする』
「俺も生きていく術を手に入れたい。あんたのように仕事をする」
『仕事なんて呼べるものじゃない』
「なんで隠す。教えてくれ。言いふらしたりしねぇから」
『………。』
彼女は、咳き込んだ俺の口からまた血が溢れたのを見て。
教えて欲しい、と言い出してきかない俺を落ち着かせるために、答えた。
『……火葬の仕事』
「…………カソウ?」
『遺体を燃やす。……それだけ』
それだけ、と。
彼女は言ったが。
それは法律に触れる行いだ。
歴とした犯罪だった。
『ーーー……頼まれたらやる。病気とか、老衰とか。他殺じゃないものに限り、請け負ってる』
「……そんなん、役所に届出りゃいいだけだろ。なんでお前に仕事が来る?」
『……キミ、帰った方がいいよ。「こっち側」で生きてきたこと、ないんだろ』
敵の生活っていうものを、知らなさすぎる。
彼女は呆れたようにそう言って、ため息をついた。