第45章 イカロスの翼
つまり、荼毘は。
こう言いたいのだ。
「……公安が、彼女を捨てた…彼女を消す、と、決めた…俺を、処刑人にした」
自分の。
ホークスの知らないところで、彼女を排除する動きが加速していた。
次期、オールマイトに、なんて彼女が期待されていたのは昔の話。
新しい個性の変容を遂げた彼女を取り巻く公安の勢力は二分していた。
彼女を飼い慣らし、次世代へ繋げようとする現会長派と。
彼女を飼い殺し、危険視する副会長派。
公安の現会長派が、命を粉にして働いていた彼女を消したとは考えにくい。
副会長派の独断で、彼女に潜入捜査の指示を出したのではないか?
「誰だろうな?アイツを敵認定したやつは」
公安が、彼女を敵と、言ったわけではない。
彼女を、敵だと。
決めつけたのは。
見限ったのは、俺だ。
荼毘が、壊れた笑みを浮かべたまま。
血の滲む拳を、力無く。
ホークスの頬に、ぺちん、と、ぶつけた。
「……なんで……勝手に仕立て上げといて、勝手に捨てんだよ……!こいつ、お前らの……お前の!力になろうと、してただろ……!!お前の視界に映ろうとしてただろ!!」
なんで気づかねぇんだよ、と。
荼毘が震える声で言った。
『ホークス』
『定例会議に呼ばれた?』
確証がなかった。
『トゥワイスがさっき言ってたの』
『多分、京都の辺り』
『なんだっけな…干支みたいな。まぁ、いつか会えるよ、死柄木に』
だから最悪を考えるしかなかった。
『ホークス』
『解放戦線の本読んだ?』
『私、漢字が難しくて、ところどころしか読めない』
『外典には内緒でさ、大事なところにマーカー引いておいて』
『ホークス』
『辛いけど、頑張ろう』
君は、言っていた。
血色の悪い顔で、俺に。
疲れた顔で、笑いかけてくれていた。
だけど。
確実だ、とは言えなかったから。
君がいる世界と、みんなが幸せになれる世界を天秤にかけて。
俺は。