第45章 イカロスの翼
「ホークス!!」
突如として現れたツクヨミが、荼毘の身体を弾き飛ばした。
荼毘はホークスから離れると、自身の目頭を擦り、ツクヨミを見据えた。
「雄英の…ダセェなぁ。学生まで引っ張り出してんのか」
荼毘はツクヨミを見て。
乾いた笑みを浮かべた。
「見ろよガキ。ホークスが殺した。仲間を守ろうと走る背中を。グサっと」
気に入らないプロヒーローの矜持をへし折ってやろうと。
荼毘が倒れ伏すトゥワイスを親指で示して、常闇に話しかけた。
「も、あっちの部屋で死んでる。お前と同じ学校に通う生徒だ。ホークスが殺した」
「お前、何しに来た?」
「助けに来たか?」
「何を助けに来た?」
「学生が健気に夢見るプロってやつあ、俺たちなんかよりよっぽど薄汚えぞ」
が、死んでいる。
この言葉を聞いて、常闇の顔色が変わった。
「……が?……そんなに、簡単に…」
「な!俺もびっくりしてたところだ。そんなに簡単に死ぬような奴じゃねぇのに、死んでんだ。信じられるか?」
ホークスが何かを常闇に囁いた。
荼毘はその謀を察して、炎を飛ばす。
常闇はダークシャドウに指示を出し、階下へと飛び出した。
荼毘はその背を追いかけようと、飛び出し、常闇に両手を向けて。
『ーーー………燈矢』
急停止した。
彼は彼女が横たわる部屋へ駆け込んでいく。
常闇や、ホークスなどはもう荼毘の意識の中から消えていた。
荼毘が彼女の元へ駆け寄り、地面に這いつくばって。
彼女を力一杯抱きしめた。
勘違いなどではなかった。
か細い声で。
彼女は、彼の名前を呼んでいる。
「今、傷を焼いて…!」
だから、死ぬな、と。
「荼毘」が、の上着を脱がせ、その傷の深さに絶句した。
もう、どう見ても。
手遅れだ。
燈矢、と。
彼女が彼の名前を囁いた。
『……ごめん』
「喋んな、黙ってろ…!」
『……ごめ……』
彼女は、ただ。
ひたすらに、謝った。
そして、そのまま。
静かに、息絶えた。
「あぁああァああ……!!!!」