第45章 イカロスの翼
よくも、と。
荼毘が怒鳴り、部屋から蒼炎が飛び出してくる。
ホークスが風圧に吹き飛ばされ、廊下の手すりに身体をぶつけた。
ばら、ばらと。
ホークスの翼が塵となって散っていく。
「よくも!!」
「トゥワイスを殺したな!!!」
炎に焼かれて。
飛ぶことも、身動きを取ることもできないホークスを、荼毘がいたぶるように蹴り付ける。
何度目かの蹴りの後、荼毘がホークスの胸ぐらを掴み、その顔を力一杯拳で振り抜いた。
「ーーー連合の、素性を調べた」
「黙ってろよヒーロー…!テメェは何度も炙って痛めつけてやらねぇと気が収まらねえ」
「けほっ…!おまえと、死柄木だけだ…!何も出なかった人間は…!誰だ…!」
誰だ、おまえは。
必死に荼毘の蹴りに耐え続けるホークスに、荼毘は言った。
「ーーー轟燈矢」
ホークスの表情が凍った。
「「荼毘」の名は、アイツから貰った。お前の仲間だよ。公安の犬に成り下がる前、アイツは「荼毘」だった。俺と一緒にいたのに、お前が出しゃばったりするから…道が大きく逸れたんだ。初めからこっち側にいたはずのアイツに、お前が可笑しな夢を見せやがった!!夢見せるだけ見せて、捨てやがって!!可哀想な奴だよなぁアイツも!!!」
「……何、を…」
「しらばっくれんなよヒーロー!!」
「アイツはずっと公安の命令で俺たちの組織に潜入してた…!!じゃなきゃ、テメェの翼なんかに黙って嬲り殺されるわけねぇだろ!!!」
ホークスの脳裏に。
考えないようにしていた、ブラックコーヒーの空き缶が思い起こされた。
暴走するトゥワイスの傍ら。
二人の仲裁に入ろうとしていた。
ホークスは、彼女に手のひらを向けられた時。
攻撃を受けてはいけないと、叩き伏せた。
やられる前に、やらなければ負けてしまうから。
フェニックスと、トゥワイスの排除が、公安から受けた任務だからだ。
「ーーー嘘だ」
公安が、彼女は敵だと。
だから。
「おかしいよな!?公安の命令でここにいんのに、お前に殺されてやがる!!アイツはここに来る時言ってたらしいぜ、「公安に捨てられた」って!だけどよ、そんな公安の闇を背負ってたやつが簡単に自由になれると思うか!?」