第45章 イカロスの翼
何年も、何年も。
君に焦がれた。
君を思い起こさない日などないほどに。
「ーーーごめん」
同じ夢を見てると思ってた。
同じ夢を見たかった。
この先の未来で、何十年先で。
君と一緒に歳を取って。
「普通」の家庭を持って。
君を幸せにしてあげたかった。
全て本心だ。
『ーーーーどうして』
ホークスが刀の代わりに構える剛翼が、彼女の身体を切り裂いた。
彼女が消え入りそうに発した声が、ホークスの耳に届いた。
飛び散った鮮血と、倒れ伏したを見て。
トゥワイスが泣き叫び、半狂乱になってホークスに飛びかかる。
「あぁあああ!!!人殺し!!!よくも…!よくもちゃんを!!!」
目にも止まらぬ早業で、ホークスがトゥワイスの身体も切り裂いた。
仰向けに倒れたトゥワイスの身体を拘束し、彼の顔面の前に翼を突き立てる。
「おめェらは…ヒーローなんかじゃねぇ。いつも、そうだ…誰も、彼も!!あぶれた人間は、切り捨てられる…!」
トゥワイスの声が、ホークスの耳の中で反響する。
彼女の『どうして』という声が。
耳から離れない。
「知ってんのかよ、二度目だぜ?これで二度目だ…またみんなを陥れた」
トガちゃんは、もう俺を包んでくれないだろうな。
ホークスは、泣きながらポソポソと話すトゥワイスから視線を逸らさない。
また地響きが鳴り、建物が揺れる。
ひっくり返っていた談話室のテーブル近くから、空き缶が転がってきた。
ホークスは一瞬だけその缶を見て、すぐ。
トゥワイスに視線を戻し。
また、空き缶を二度見した。
視界に入ってきたのは、彼女がこの部屋に来る前に買った、ブラックコーヒーの缶だった。