第45章 イカロスの翼
一瞬で数十倍化したトゥワイスを、瞬く間にホークスの翼が切り裂く。
トゥワイス本人も、偽物ですら涙がこぼれ落ちて、止まらない。
は冷静さを失っている彼の様子を横目で見て、雨のように降り注ぐホークスの剛翼から自身の顔を両腕で庇い、『ホークス、待って』と声を発した。
音速で飛ぶ彼の幾つもの羽が彼女の声を掻き消し、ホークスは、気づかない。
『話が「生成速度は目を見張るものがありますが、倍々で増やしていくにつれ耐久力が低くなってますね」
がホークスに右手を向けた。
『待っーーー』
剛翼が、彼女の右の掌を貫き、右肘、右肩に突き刺さる。
が指先に走る激痛に呻き、よろめいた。
「ちゃん!!」
「ここまでやってきて、絆されるようなミスはしない」
の右腕から、熱い血が溢れてくる。
(刺さ、れた)
やり過ぎとも言える彼の攻撃に、腕を押さえたが涙を浮かべ、白炎が溢れる瞳でホークスを見上げた。
「おとなしく同行してくれればまだやりようはあったんだ。俺は……あなた方のこと、好きでしたし」
『…ホークス』
何を言っているのか、わからない。
が震える声で、そう言った。
高速化していくトゥワイスとホークスの戦闘。
トゥワイスが、ホークスに殺されるところだけは見たくなかった。
『……っトゥワイス、だめ』
「無駄だ屑が!屑野郎が!!」
「高速化する敵退治。なぜかわかりますか」
経験上、意志の固い人間は気絶してくれない。
そう冷たい表情で呟くホークスに、真っ向から殴りかかっていくトゥワイス。
がその前に飛び出し。
二人の間に割って入った。
『やめて!!』
「ーーーーー。」
ここまで、やってきて。
絆されるようなミスはしない。
してはいけない。
許されない。
なのに。
ーーー鷹見くん。
『ーーーホークス』
彼女の声が、俺の後ろ髪を引く。
大好きだった彼女の笑顔が。
大好きだった彼女との日々が。
思い起こされて、動きが鈍る。