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イカロスの翼【ヒロアカ】

第44章 君は友達




風が強く吹いている。
が右の手のひらに炎を乗せた。
真似をして、轟も左の手のひらに炎を乗せる。
真冬のバルコニーで風が冷たくとも、二人一緒なら寒さを凌ぐことができた。


「エンデヴァー、なんでかはわからないがお前に突っかかる。やめさせたいんだが、聞かねぇ。やりづらいだろ。ごめん」


轟が彼女の生み出す白炎を眺めながら、そう言った。
は轟の生み出す炎を眺めながら、『こちらこそ』とよくわからない返事を返してきた。


「……ちょっと背中寒いか」
『大丈夫。……毛布でも持ってくる?』
「そうしよう」


一度轟が部屋に戻り、毛布を取ってくると、は両手に温かいココアを入手してきていた。
彼女の肩に毛布をかけて、ココアを受け取る。


『…あれ?轟くんの、毛布は』
「一つしかなかった」
『そうか。じゃあ一緒に入ろうよ』


それぞれ片手でココアを持って、それぞれ片手で毛布の端を持って。
一つの毛布に二人で包まった。
バルコニーの縁にココアのマグカップを置いて。
またそれぞれの炎で暖を取った。


『キャンプ行ったことある?』
「ない。…あるか?」
『ない。キャンプみたいじゃない?よく知らないけど』
「そうかもな。…キャンプ、行ってみたいと思うか」
『行ってみたい。またキャンプファイヤー見たい』
「たぶん、個人個人でキャンプファイヤーはしないと思う」
『そうなの?火は使わない?』
「焚き火はするんじゃねぇか?…たぶん」
『そっか』
「…キャンプするなら、釣りがしてみたい。渓流釣り」
『いいね。魚の塩焼き?食べてみたい』
「いいな」


憧れるよな、という轟に、が同意した。
轟の左腕に、の右腕が触れている。
その箇所が温かくて、轟が一瞬、視線をやった。


「…なぁ」
『ん?』


轟が彼女の右手に左手で触れた。
冷えた彼女の手と、自分の熱い手の体温が混ざって、心地よかった。


「ーーー少しだけ」


このままでもいいか。
轟がを真剣な眼差しで見つめて、問いかけた。


『……』


断られるだろうと予想していた。
けれど、彼女は繋がれた自分の手を見て。
いいよ、と返答を返した。


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