第5章 可愛い、超可愛い
1年A組の生徒達は、切迫した表情を浮かべながらも技を出し合い、一斉に飛来するボールから、仲間と自分の身を守り続ける。
「ほぼ弾くかァ」
「こんなものでは雄英の人はやられないな」
地中からの攻撃は耳郎が地をえぐり、不規則な軌道の攻撃は芦戸が強酸の膜を張り、防御した。
開始早々、袋叩きに遭っている異様な光景。
既視感のあるその光景を眺め、今まで不服そうな顔をしたまま棒立ち状態だったが、一方の敵の集団の方へと進み出た。
「ん?一人出てきた!俺がもらう!」
「おい待て、抜け駆けすんな!!」
一人がボールを投げると、それに釣られたように、何人もの受験者が腕を振りかぶる。
「さん、危なーー」
緑谷の声に被せるように。
彼女が不満を口にした。
『いやいや』
『弱い者いじめって…君らヒーロー志望でしょう』
「「……え?」」
その場にいた、彼女以外の誰もが。
自分の目を疑った。
「…ボールは?」
飛来していたはずのボールがない。
一つ、二つの話ではなく。
全てのボールが見当たらない。
目掛けて宙を浮いていたはずのそれらは、一瞬強く光ったように瞬いて、その形を消した。
正しくは
その形が保てなくなるほど、瞬時に焼き尽くされ、かき消えた。
『カルラ』
「彼」の名前を、彼女が呼んだ。
すると、その声に呼応したかのように、彼女の身体から、眩しくて目を背けたくなるほどの神々しい炎が噴き出した。
≪呼んだか、≫
周囲に響き渡るその声は、に纏わりつく業火の中から聞こえてくる。
そしてその声の主ーーー「カルラ」と呼ばれた掌サイズの炎の鳥が、の視界に映り込もうと、その姿を現わした。