第5章 可愛い、超可愛い
先着、100名。
「なら、同校で潰し合いはない…!むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋!皆!あまり離れずひとかたまりで動こう!」
「フザけろ遠足じゃねぇんだよ!」
「バッカ待て待て爆豪!」
「待ってお二人さん、俺も行く!!」
「俺も。大所帯じゃ却って力が発揮出来ねぇ」
「轟くん!」
試験開始まで、あと45秒。
「緑谷時間ねえよ、行こう!」
「単独で動くのは良くないと思うんだけど…」
「なんで?」
試験開始まで、あと15秒。
「だってホラ…僕らは手の内バレてるんだ!さっき僕が言った勝ち筋は他校も同様なワケで…学校単位での対抗戦になると思うんだ」
試験開始まで
「そしたら次はどこの学校を」
あと5秒。
「狙うかって話にーー」
『雄<START!!!!>し』
の声が、試験開始を告げるアナウンスの大音量にかき消された。
緑谷がの声の断片を聞き、振り返った視界の隅。
1年A組の生徒たちが立ち止まった前方、後方、右方左方四方八方に、他校の受験者達が現れた。
集団で動いているらしい何十人もの他校生が、雄英生をぐるっと取り囲むように身構えーーー
全員が、同時に、攻撃を仕掛けてきた。
「杭が出てればそりゃ打つさ!!」
雄英生が、集中砲火を浴びる理由。
それは、この試験に参加している幾多もの高校の中で、唯一、雄英だけが「個性不明」というアドバンテージを失っているからだ。
体育祭というイベントが開催され、脚光を浴びたヒーロー科の生徒たちは、もれなく。
個性、スタイル、弱点、何もかもが、いまや全国規模で大公開されている。
「雄英潰し」なんて通称がつくほど恒例となっているその「不利な者いじめ」は、今年も例に漏れず、スタートコールと同時に始まった。