第42章 置いてきぼり
轟の話を聞いて。
はようやく、今朝方買ったサンドイッチに手をつけた。
『はい』
「…ありがとう」
同じものが二つ入ったサンドイッチの袋を眺めて。
轟が聞いた。
「いつも、半分くれるだろ」
『うん。半分こ』
「習慣なのか」
『いいや、理想。勝手に半分こしたいから半分にする。受け取ってもらえたらラッキー』
「半分になってラッキーなのか」
『うん。押し付けでしかないからね。誰かに受け取ってもらえたら、それはラッキー』
「……そうか」
轟が少しだけ微笑んで、受け取ったサンドイッチを眺めた。
「俺、お前のそういうところが好きだ」
『……そう?』
「うん」
『押し付けがましいところ?』
「……フッ」
『笑ってるね』
「笑うだろ」
『そうかな』
「俺にも」
俺なんかにも、と。
轟は言い直して。
「半分、分けてくれようとするところ」
『轟くんだからだよ。友達だからね』
彼女から線を引かれたことを理解して、それでも。
轟は彼女を見つめた。
サンドイッチを頬張っている彼女と視線を合わせて。
同じように、彼女から与えられたサンドイッチを、口の中いっぱいに頬張った。
「話してくれて嬉しかった」
『聞いてくれてありがとう』
お互いがお互いに。
特別な絆を感じている。
それは、明らかだ。
誰に聞かれても、確信を持ってそうだと答えられる。
「…他、話したいことあるか」
『あー、うん、もう大丈夫。ごめん』
それでも、肝心なところをまだ隠したままの彼女。
そんな彼女の秘密を聞き出せるほど、轟は聞き上手でも何でもなかった。
『……あのね』
けれど話し下手な轟に向かって。
なぜかは、話し続けようとした。
「何か」を聞いてほしいんだと轟はわかっていたのに。
その「何か」が何なのか、聞くことができなかった。
『……火遊びが好きでね、昔から。異常だ…ってぐらい』
そんな話を聞いても、やはり。
それは彼女が話したい「何か」ではない、とだけは彼女の雰囲気から分かるのに、分からない。
『それで…何が異常かって…人もね、その……』
「…うん」
『………燃えやすそうだなぁって思うの』