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イカロスの翼【ヒロアカ】

第42章 置いてきぼり




「俺は」

「お前みたいに、人と関わってこなかった」

「泣いてる女の子にも出会わなかったし」

「行き倒れのホームレスにも出会ったことない」

「家の中で訓練ばかりしてた。家族とも顔を合わせずに」

「兄が二人と、姉がいて」

「顔を合わせてもいないのに」

「一番上の兄は、俺が家にいること自体が迷惑そうだった」










ただ、ぽつりぽつりと。
轟が思いついた言葉を声に乗せて。
に話して聞かせてくれた。
が知らない轟のこと。
たくさん。
たくさん。
ゆっくりと教えてくれた。













「家の中に、二つの家があった」

「俺が暮らす家と、みんなが暮らす家」

「家族みんなが暮らす家に出入りした記憶がまるでない」

「迷惑かけるとかかけないとか、それ以前に」

「ほとんど何も話さずにきた」

「二番目の兄は、一番目の兄の愚痴を寝る前に聞いてやって」

「常に不眠だったって最近知った」

「迷惑だったって」


















が話してくれたから。
エンデヴァーに会う前に。
話してみようと思ったことがあった。

























「と出会う前。飯田がやらかしたことがあった。校則破るようなーーー大事件」

「緑谷と二人、言い方は悪いが、巻き込まれた」

「その時、飯田が言ってた。「迷惑をかけてすまない」って」

「…何が言いたいかっていうと」

「迷惑、かけられるような距離に、初めて誰かがいることに気づいた」

「それが嬉しかった」



























嬉しかったんだ、と。
轟が呟いた。












「…エンデヴァーが歩み寄ろうとしてることはわかってる」

「わかってても、嫌で仕方ない」

「夏兄や姉ちゃん、家族の誰に迷惑かけられたって迷惑じゃない」

「ただ、あいつは違うんだ」

「今でも思い出しちまう」






















「ーーー俺だけがいない家族の家」





















轟が、俯いて、言葉をこぼした。
が、彼を見つめて。










ただ、そっと。
















彼の背中を優しくさすった。




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