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イカロスの翼【ヒロアカ】

第42章 置いてきぼり




色んな人に出会ってきた。
色んな人の姿、形を見てきた。
まず初めの第一印象は、顔を見る、とか手を見る、とかそんなんじゃない。
かっこいい人だな、とか。
華奢な子だな、とか。
そんなんでもない。
どこが燃えそうかなって考える。
髪かな、手かな。
色々考えて。
話しかける。


『初めまして』

『素敵な姿だね』

『燃やしてもいい?』


心の中で誰かがそんな事を言っているのが分かってる。
ただ、絶対に言っちゃいけないって分かってる。
自分が「普通」じゃないんだって分かってる。
だから言わない。
誰かを傷つけたくはないから。
誰かを燃やしてしまわないように。
スイッチが入らないように。



『この前、この話別の人にしたら』

『燃やしていいよって言われた』

『すぐ治るから、いいよって』

『でも、違う』

『燃やしたいけど、燃やしたくないの』

『……傷つけたくないの』

『でも嬉しかった』

『嬉しくて』

『もっと自分が嫌いになった』


























轟くんは、何て言うのかな。
色んな話をした、短い短い旅路の最後。
終着駅に着く直前で、そんな話をした。
轟くんは、少しだけ考えてくれて。
答えをくれた。





















「…今も辛いか」
『ううん、慣れた』
「そうか。なら」



















「ありがとう」
 















「燃やさないで、いてくれて」










「我慢してでも、俺と一緒にいてくれて、ありがとう」





















轟くんは。
私の目を見てそう言った。
燃やしたいのに。
燃やさないでくれて。
ありがとう、なんて。
そんなおかしな言葉を平然と私に返した。


『…なにそれ』


新幹線が終着駅に差し掛かる。
アナウンスが鳴って。
座席に座っていた人たちが一斉に移動の準備を始めた。


『……っ』


私は。
溢れてくる涙が堪えられなくて。
顔を上げられなくなった。
轟くんが私の背中をさすってくれるから。
もっと涙が止まらなくなった。







乗客が私たちを置いて去って行く。










それでも、轟くんは。













彼だけは、私が泣き止むまで、私の隣にいてくれた。




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