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イカロスの翼【ヒロアカ】

第42章 置いてきぼり




『子どもの頃、女の子の友達がいて』

『よく遊んでた。17時のチャイムが鳴って帰っちゃうんだけど』

『帰りたくないって言うのに帰る』

『帰りたくないって言われたら』

『帰んなくていいよって言うでしょ?』

『でも帰っちゃう。迷惑かけられないよって』

『毎日毎日遊んでたのに、急に来なくなって』

『なんでかなって思ってたら、普通に』

『フツーに放課後、学校の子達と遊んでた』

『それっきり』










は、次の停車駅に着くまでずっと。
















『昔の家のあったところにさ』

『お腹空かせた人が倒れてて』

『雪の日に倒れてたらさ、心配になるでしょ?』

『だからあったかい所でご飯一緒に食べてたの』

『毎日毎日ご飯食べたのに、急にいなくなって』

『家族でもなんでもないからね、それが普通』

『フツーに、迷惑かけないように出て行った』

『それっきり』

















堰き止めていた何かが溢れるように。
自分の話をし続けた。
俺の知らない話。
俺の知らないのこと。
瞬きも息継ぎも忘れて。
周りの乗客の視線も意に介さず。
次から次へと色んな人間の話をして。
話して。
話して。
話し続けた。














『……家族ができた、8歳か9歳か10歳の頃』

『楽しかった』

『毎日一緒だった』

『世界を敵に回しても』

『私は彼の味方でいようって決めた』

『でも私、何もできなくて』

『彼の顔に泥を塗ることしかできなくて』

『そばにいるだけで迷惑かけるようになった』

『そばにいない方がいいだろうなって思うようになった』

『だから分かるようになった』












あなたに迷惑かけるからって。
勝手に遠ざかっていく人たちのことを。
ちょっとだけだけど。
気持ちがわかるようになった。
























「……迷惑だったのか。その女の子と、行き倒れの人。そばにいたら」
『いいや?全然迷惑なんかじゃなかった』
「……一緒だな」
『一緒かな』
「一緒だと思う」












「お前の家族になった人も、迷惑だなんて思ってないと思う」










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