第5章 可愛い、超可愛い
「えー…ではアレ…仮免のヤツを…やります。僕ヒーロー公安委員会の目良です」
好きな睡眠はノンレム睡眠、どうぞよろしく。
壇上に立つ試験監督者が、公安という組織の闇を露呈させながら、ぽつぽつと試験内容を説明し始める。
なぜか、いつになく眉間にシワを寄せたを横目で見ていた轟が、ぼそっと声を発した。
「…どした、」
『頑張らなきゃいけないから、頑張ろうと思ってる』
「……ん?…………。」
なんだその、変な言い回し。
そう言おうとした轟が、眉間に力をいれたままのの両手が、キツく握りしめられていることに気づき、言葉をつぐんだ。
「…そうか」
『うん』
轟くんも、頑張って。
が視線を司会者から外し、轟へと向けた。
視線を交差させ、二人がもう一度目良の方へと意識を向ける。
「事件発生から解決に至るまでの時間は、ヒくぐらい迅速になってます。君たちは仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる」
そのスピードについていけない者。
ハッキリ言って厳しい。
目良はそう前置きを済ませて、第一次試験の内容を伝えた。
「試されるはスピード!条件達成者先着100名を通過とします」
どよめいた1400名余りの受験者たち。
そんなざわつきを意に介さず、目良が読み上げた第一次試験のルールというのは単純なものだった。
ターゲットを自分の身体に3つ装着し、3カ所にボールを当てられたら即脱落。
最初に持っているボールの数は全部で6つ。
通過するためには、自分が脱落する前に、誰か二人を脱落させること。
試験内容の説明が終盤に差し掛かり、ボックス型に作られていた試験会場の天井と壁が展開し、その全貌が姿を現した。
「各々苦手な地形、好きな地形、あると思います」
自分を
活かして
頑張って
そんな耳障りのいいセリフを口にする、組織の人間に。
は眉間のシワを一層深くして、拳を力強く握り直した。
「さぁ、ターゲットとボールが行き渡りました!1分後、試験を開始します!」