第41章 袋詰めの思い出
あの時は、ありがとう。
トゥワイスが言った。
「ーーートガヒミコとも、トゥワイスとも面識があったんだ」
へぇ、そうだったんだ。
ホークスが笑顔を顔に貼り付けて呟いた。
またあらぬ誤解を生んだようで。
私は一瞬思考して、ため息をつきかけて。
呼吸を止めた。
「どこまで思い出したんだ」
片っ端からチーズの包装を破いて、鍋にぶち込んだ。
不貞腐れて見えないように。
丁寧に。
背後からかけられた荼毘の声に、もっともらしく深く頷いた。
何回も何回も。
壊れた人形のように、頭を縦に振った。
「イエスイエスじゃねぇんだよ。どこまでって聞いてんだ」
『キミを知らないところまで』
ご丁寧に、荼毘がチーズの山を直火で焼いた。
こんがり焼けたチーズの山を見て。
遂にため息が出た。
『……闇鍋、したことないんだね。焼くんじゃなくて溶かすんだよ。どろっどろに。見るも無惨に。熱烈に』
「おい荼毘、食わねえなら邪魔すんな!」
今年があと数時間で終わっていく。
新しい一年がやってくる。
私を置き去りにしたまま。
忘れたはずの過去が日に日に頭の中に浮かんでは、「お前はそんな人間じゃないよ」と頭を殴られ続けているような毎日。
『……もう幾つか寝たら、きっと思い出す』
「お正月の歌にそんなのあるよね。仁くんもちゃんとお友達だったんですね!荼毘くんだけ仲間はずれカァイそう」
「起きてそうそう臭えチーズの仲間入りするか?」
「や!」
コタツに突っ伏したまま、ヒミコちゃんが私の方を見つめて笑いかけた。
ちゃん、お腹痛いの?と。
私の顔を観察しながら、彼女がそんなことを言う。
『痛くないよ、悲しいんだよ』
焼けこげたチーズをフォークで突き刺した私に、彼女は言った。
「ずっとずっと悲しいんですね。ダイジョウブ?」
自分を置き去りにした昔の友達に。
心配されて。
「ちゃん、チーズ!まだ生き残りいるからこっち使おうぜ!」
自分を置き去りにした昔の友人に。
慰められて。
「」
自分を置き去りにしようとする、初恋の相手に。
「トゥワイスと、どこで知り合ったの」
尋問されて、探りを入れられて。
ただ、あーぁ、と思った。
(……轟くん何してるかな)