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イカロスの翼【ヒロアカ】

第42章 置いてきぼり




新年。
新幹線に乗って、友達の顔を見に行った。


「明けましておめでとう」
『おめでとうございます』


二人とも、片手にはヒーローコスチュームの入ったスーツケース。
これからプロヒーローエンデヴァーに会いにいく。
春先までのインターンだ。
私のコスチュームには、厚底が鉄製のブーツが入っているから、スーツケースがやたらと重い。
よたよたとよろけて改札を通ったら、心配した彼が振り返った。


「持てるか?」
『うん、大丈夫』


短い会話が終わって、ホームで新幹線が来るのを待った。
緑谷くんと爆豪くんは、何やらオールマイトと話があるらしく、何本か後の新幹線で来るらしい。


『あ、駅弁』
「…駅弁、いいな」
『朝ごはん食べてない』
「そうだな。…見ていくか」


いつかの仮免講習でのコンビニのように。
新幹線が来るまでの数分。
ラインナップを吟味した。


『……んー』


サンドイッチやおにぎりがなくて、唸っていたら。
彼が駅弁屋さんではなくて、隣の売店へ私の手を引いて、誘導してくれた。


「こっちの方が食べやすそうだ」
『……んー、本当だ。軽くていいねぇ』


並ぶ軽食を眺めて数秒後。
気に入ったサンドイッチと、カフェオレを手に取った。
轟くんは、手近なおにぎりを二つ、手に取った。


『年末、何食べた?』
「…蕎麦だ。年越しそば」
『いいねぇ』
「年末、何食べた」
『カニとチーズ』
「それ合うのか」
『合わなかった』


新幹線が来て。
二人で座席に腰掛ける。
珍しく近い距離感で隣に並んで。
不思議とホッとした。
轟くんが私の右隣に座っていて。
なんでホッとするのか考えて。
思い至った。


「お」


急に彼の肩によしかかったら。
彼が当たり前の反応をした。


『あったかいからだ』
「………」


轟くんの半分があったかい。
焚き火のような体温が、彼の方から伝わってきて、安心した。


「…熱いだろ」
『あったかい』


あまりにも失礼がすぎることを自覚して。
彼から離れた。


『失礼』
「…いや」


なんかあったか、と。
キミが聞いてくれる。
何もない、と。
キミに答えた。
何もないか、と。
キミが繰り返すから。
何か話していたくて。


『…轟くん』
「ん?」





何か



何かを



聞いてほしくて








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