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イカロスの翼【ヒロアカ】

第41章 袋詰めの思い出




「……助かった……坊主、ありがとうな…!ありがとう…!」

俺は勝手に理解した。
目の前のこの少年が、俺を生かしてくれたんだと。
勘でわかった。
色々、細々と聞く前に。
情けねぇ事に俺は。
子どもの前で、嗚咽を漏らして泣いていた。





















気づけば、また眠りに落ちていた。
ほっとして気が抜けたのか、夜が明けるまで眠りに落ちて、ズタボロのカーテンから差し込む光が眩しくて、目が覚めた。
今度は、ちゃんと。
紙袋が頭に被さったままの起床だった。


「……っぁ……昨日の坊主…」


姿を探して辺りを見回すが、少年は近くにはいなかった。
俺が眠りこけていたのは、古い木造のワンルーム。
外国にあるような、モーテルに似た小屋だった。
ボロボロに穴の空いたカーテンから日が差し込んで、昨日よりもよりはっきりと現状が見て取れる。
昨日、俺の命を繋いだ暖炉には、今は鍋が吊り下げられて、旨そうな匂いをさせている何かしらの液体が煮えたぎっていた。
その食欲を誘う香りに、俺は地面を這って、暖炉の方へと近寄った。


「飯だ!!!」


1週間ぶりの食事を目の前にして、俺は叫んだ。
すると、その声を聞いて起きたのか、少年が出入り口と反対方向にある扉から現れた。
だらしなくよだれを垂らしている俺を見て、少年が言った。
食べさせてやるから、落ち着けよ、と。
少年が持ってきた深皿にスープを注いでもらって、俺はまた涙を流しながら、その食事をかきこんだ。
久しぶりの食事だった。
今まで食べてきたどんな贅沢品よりも美味かった。
薄い味に、カケラのような肉と野菜。
それでも、美味くて堪らなかった。

俺のオーバーリアクションを見て、少年は不思議そうに俺に問いかけた。
そんなに腹が減ってたのか、パンも食べられるかと。
俺は答えた。


「誰かに飯を作ってもらうなんて10年ぶりだ…!それが嬉しいんだ…!」


ありがとう、すまねぇ。
泣きながら、それでも食事の手を止めない俺を見て。










そうだ、あの子は言ったんだ。










白炎を瞳に燻らせて、ただ一言。














『ーーー助けてやれてよかった』

















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