• テキストサイズ

イカロスの翼【ヒロアカ】

第41章 袋詰めの思い出




発狂してから1ヶ月。
貯金が底をついた。
個性を使えなけりゃ、悪事を働くこともできず。
真冬の大晦日。
贅沢な食事なんて夢のまた夢。
暖かいベッドで眠ることも暖炉の日にあたることも出来ず、指先から凍っていく自分の身体を必死にさすりながら、くたばっていくのを覚悟した。


「さみぃ……もう無理だ、死んじまう…!務所に入ってた方がまだあったけぇし、飯も食えてたのになぁ…!」


紙袋を頭に被せたホームレス。
数年前の俺の状況は底辺の底辺だった。
ホームレス仲間がいやしないかと、県内で有名なホームレスの溜まり場だった高架下に身を寄せた。
しかし、みんなこの場で冬を越すことは難しいと判断したのか、安宿に避難しているか、刑務所で冬を越すことを選んだか、どちらかのようだった。
人の姿を全く見つけることができないまま、時間だけが過ぎていく。


(…無銭飲食でもして、捕まろうかな)


その夜は例年よりも冷え込んで、吹雪になった。
脳みそまで凍っちまいそうなその日。
俺は遂に意識を保てず、手放した。



























薪の爆ぜる音で目が覚めた。
自分が裂けた音じゃないかと飛び起きた。
現在地がどこかもわからないまま、自分の顔を両手で掻きむしって、気づいた。


「あぁッ!!包まなきゃ!裂けちまう!!!」


袋が。
袋がない。
包まなきゃ。どうやって。何を?俺をだ、やめろ、裂ける!袋がないどうしてどうしてどうしてどうしてーーーー


「あぁあ……!!!」


叫んで叫んで叫んで。
急に目の前が真っ暗になった。
自分の叫び声が誰かに被せられた紙袋の中で反響していることに気がついたのは、発狂して3分後。
ようやく落ち着いて、思考できるようになって。
気づいた。


「……坊主、ここはどこだ」


見ず知らずの少年が、俺のそばで焚き火を起こしていた。
よく見ると、それは古い暖炉のようだった。
あばら屋のような小屋の窓から、吹雪いている外が見える。
俺はどうやら、命を繋いだようだった。


「……寒い……!だめだ、死んじまう…死なねぇよ…!」


もう少し寝ていなよ、と。
少年が薪を暖炉にくべながら、凍える俺に声を発した。
ここはどこなんだとか、お前は誰なんだとか。
色々まず聞かなきゃいけない、わかってるはずなのに。

/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp