第40章 闇の饗宴
「ごめん、ちょっと出てくる」
「え?鍋食べねえのかホークス!?」
「すぐ戻るんで!先やっててください」
ハサミを届けている間に外典が立ち去ってしまうことを危惧していたホークスだったが、意外にも、外典は鼻を啜りながら扉の前で待っていた。
「…あいつ、何してた」
「あいつ??片っ端からジュース荼毘に飲まれて落ち込んでました」
「いい気味だ」
ふんっと鼻を鳴らして談話室から遠ざかっていく外典を追いかけて、ホークスが翼を広げて宙に浮いた。
「…運命的な出会いだったってリ・デストロが言ってましたよね。あれってどういう意味です?」
「何の意味もない。デストロの手記が赤い表紙だから、運命の赤い糸になぞらえて仰ってるだけだ。電車でデストロの手記を読んでるあいつをリクルートした。だから運命的にしたいんだ、あの方は」
「和歌山の電車で彼女を見たんですか?雄英に通ってるのに」
「…違う。関東だ。僕が関東に用事があって出かけてた。帰り道、あいつを見かけたんだ」
出会わなければよかった、と。
外典が呟いた。
「あいつと出会ってから、辛いことばっかりだ…何も思い通りにいかない。もう嫌だ…!」
ホークスに話しかけているというよりは。
自分に言い聞かせているような彼の声量を聞いて。
ホークスが外典の言い分を鑑み、思考した。
例えば。
ヒーローが暇を持て余す社会を、実現できたとして。
彼女がその世界にいなければ、俺はそこに意味を見出せるのだろうか。
例えば。
彼女が敵で、俺が世界を救うヒーローになったとして。
彼女がその世界から除外されてしまったら。
俺は。
その世界を愛すことができるのだろうか。
(ーーー何の意味がある?)
ヒーローが暇を持て余す、平和な社会。
そこにきっと、彼女はいない。
そんな社会を夢見たとして。
彼女がその世界にいないのであれば。
何の意味もないではないか。