第40章 闇の饗宴
少し呼吸を整えてから、目的地へ向かった。
食堂からキッチンバサミを手に入れて、談話室に戻ると、部屋の扉の前で右往左往している外典と出くわした。
「「あ」」
ホークスに発見されたと知ると、外典は脱兎の如く駆け出した。
正しくは、駆け出そうとして、廊下のカーペットに足を引っ掛け、激しく転倒した。
「…………ダイジョーブですか?」
「黙れ」
痛みに悶絶している彼の傍に、ホークスがスイーッと飛んで寄っていく。
「ならここにいますよ。一緒に鍋パします?」
「しない。誰がお前らなんかと」
「…えーと…しばらくは空かないと思うけど。デザートにチーズフォンデュやろうとしてるし」
「な…ッ」
時刻はもう夜8時を回っている。
これから鍋をして、チーズフォンデュをしていたら、外典が彼女と過ごせる時間は、新年を迎えてしまった後になるだろうと推測できた。
「なんで……なんで、お前ら、後から来たくせに」
「えっ」
よほど大晦日を彼女と過ごすことを楽しみにしていたのか、外典が大きな瞳に涙を浮かべ始めた。
(えぇーーーっ、幼いーーー…)
見た目二十歳を超えていそうな年齢に見える割に、情緒不安定な外典は、荼毘に皮肉られても仕方ないほどに、彼女のことになると途端に思考が極端になった。
グズ、グスと泣き出してしまう彼を見て、ホークスが慌てた。
「いや、まだ大晦日終わってないから!一緒に鍋パーティーしましょう!」
「嫌だ…二人がいい」
「じゃあ年越しの瞬間だけ二人になったら!?俺が泣かしたみたいになってる!」
「泣いてない!」
「ええぇー……」
「もう嫌だ……何なんだお前ら、あいつも、何なんだよ」
僕があいつを見つけたのに、と。
外典が涙声で訴える。
「……よければ、二人の馴れ初め聞かせてほしいなぁ、なんて思ってるんですけど、時間ないんですか?敵連合の皆さんもいますけど、彼女のそばに居たいなら、中に入ったら?」
「吸血女がいるだろ。絶対に嫌だ」
「じゃあ俺とりあえずカニバサミ置いてくるんで。俺と少し別の部屋でお茶でもしません?」