第40章 闇の饗宴
トガが死柄木にねだったというコタツを囲み、敵連合と鍋をする。
スピナーが年越しテレビを所望し、一般家庭のような空間が山荘の談話室に広がった。
何やら拗ねていたらしい荼毘をコンプレスがなだめて、鍋パーティーに彼を無理やり参加させた。
どうやら、彼らは潜伏期間中十分な資金がなかったらしく、これでもかというほどに食卓の上を思いつく限りの贅沢で飾っていた。
資金源は、デトラネットだという。
「カニ食べたことない」
「待てよ、ハサミがねぇぞ」
「カニなんて何十年ぶりだよ…」
カニバサミがないことに気づいても、こたつから出たくなさそうなトガと、トゥワイス、スピナー、コンプレス。
そのこたつのすぐ隣にあるソファ席で、が自分の手元のコップにジュースを注いでいる。
荼毘が注ぎ終わったのコップをしれっと強奪し、勝手にコップに口をつけた。
はムッとすることもなく、諦めずに新しいコップにジュースを注いだ。
「ホークスは何飲むんだ?酒は?」
「あー、いや…テキトーに」
どれ?とコンプレスがペットボトルの飲み物たちを指差す。
「…お茶で」
「はい、粗茶一丁!」
「スピナー、私ココアがいいです」
「おまえも荼毘も働け!」
コンプレスの義手から手渡されるコップを受け取って、ホークスが目の前に広がる敵連合の日常風景に、呼吸を詰まらせた。
(ーーーあ、ヤバい)
「ハサミ俺取ってきましょっか」
「いいのかよ!やっぱりホークスいい奴だなお前!」
『一緒に行こうか。場所わかる?』
「案内してくれたら嬉しいな!」
「食堂のキッチンだ、わかんだろ。とっとと行け」
荼毘に冷たくあしらわれ、不平不満を口にしながら、ホークスが足早に部屋から飛び出した。
(……やばかった。絆される)
敵連合の中にが混ざっているせいか、まるでホークス自身の抵抗感がなかった。
仲間と鍋を囲んでいるような錯覚に陥った。
楽しいと思う自分がいた。
仮初の日常に、引きずり込まれていた。