第39章 何も知らずに
「俺はが好きだ」
「だから笑っててほしいし」
「泣いてるなら、理由が知りたい」
「俺はお前の笑った顔が好きだから」
真っ直ぐに想いをぶつけてくる轟と視線を合わせていられず、がふいっと視線を逸らした。
『……轟くんは、勘違いしてるよ』
「…勘違い?」
『私はキミが思うような人間じゃないし、周りを嘘で固めてる。あの涙も嘘かもよ』
「…嘘であんな顔しねぇだろ。それに、俺が思うような人間ってなんだ」
『キミが好いてる緑谷くんのような素直さもなければ正義感もない。なんで今ここにいるかもよくわかってないような人間に、好意を向けない方が良いよ』
「好意のない人間に話すほど、お前口軽くないだろ」
『…ん?』
「黙ってたら一向に話してくれないんだ。だったら近づくしかねぇだろ」
『知られたら嫌われるようなことを話すと思う?』
「嫌わねぇよ」
轟は。
「嫌いにならないと思う」、とは言わなかった。
「お前に信用されたい。そのためにもっと一緒にいたい。だから、インターンも俺と一緒に来てほしいんだ」
『……。』
たった一ヶ月。
インターンに行ったところで、轟との関係性が変わるなんて、には考えられなかった。
しかし。
「俺の存在が友達以上じゃないのは知ってる。でも、友達として、一緒にいたいと思ってくれてると思ってた。今日お前が学校に来なくて、痛感したんだ。お前が傍にいてくれた方が、俺は何倍も頑張れる」
ダメか、と。
轟がに問いかける。
一緒にいたい、という言葉を聞いて。
の瞳が少しだけ揺らいだ。
『……』
「、おまえはどうしたい?」
『……私は』
『私は…みんなといたいよ』
彼女から折り返しがあったのは、俺が電話をかけてから10分後。
こんばんは、という単調な挨拶に、精一杯明るく返事を返す。
「こんばんは。もしかしてもう寝ようとしてた?」
これから眠るという彼女の返答に、俺は言葉を詰まらせた。
「あー……少しだけ、いい?」
『土日にまた行くよ。その時じゃダメなの?』