第39章 何も知らずに
「、好きだ」
耳元で告げられる彼の告白。
は目を丸くして、その場に立ち尽くす。
轟は、早鐘を打っている自分の胸を精一杯動かして、深呼吸をした。
「お前が、俺のことそんな目で見てないことは知ってる。だから返事はいらない。ただ…伝えておきたかった」
俺は。
が好きだ、と。
再度告げられるその言葉に、の頭が真っ白になった。
『……好き?』
「……あぁ」
『どうして』
震える声で彼女が問いかけてくる。
轟は「どうして」というその彼女の疑問に、応えた。
「………………」
『………………』
「………………」
『………………』
「………わ」
『わ?』
「……わかんねぇ」
『わかんないんかい』
突然抱き締めてきたかと思えば。
突如告白してきて。
その理由はわからないと言う。
「……ワリィ」
『なんで私が振られたみたいになってるの』
「振ってない。ちゃんと好きだと思う」
『思う』
「……好き、だと思う…」
『なんで自信をなくしていくの』
「今まで、こんなに他人を好きになったことがねぇからだ」
轟はから離れて、少し気恥ずかしそうに言葉を続けた。
「友達の好きじゃない…と思う。だけ特別に思う。だから、きっとそうなんじゃないかと」
なんだかふわふわとしだした轟の主張。
はどうしていいのやら対応に困り、んー、と唸った。
『轟くんはどうしたいの』
「できることなら付き合いたい」
『返事いらないってさっき言ってた』
「どうせノーだろ。だからいらない」
『……それは……』
「俺も聞きたいことがある。お前のホークス好きは、「そういう好き」か?」
急に出てきた「ホークス」という単語に、はハッとして、一瞬携帯画面を確認した後、また轟を見つめた。
『そういう好きではないよ』
「そうか。良かった」
『……』
なぜ好きなのかわからない、というわりに、彼は。
意外にもはっきりと、への独占意識を持っているようだった。
『返事、いらないのに、なんで…その……』
「…返事はいらねぇが、意識はしてもらいたかった」