第38章 夢の一端
結局、初めは素直になれずにいた爆豪も約1時間後に頷き、緑谷と爆豪のエンデヴァー事務所インターン配属が決まった。
眠りにつく彼らを見送って、轟は「ちょっと待っててくれ」とにリビングで待つよう促した後、一度自室に戻り、片手に小包を持って戻ってきた。
あれだけ騒がしかったリビングには、今は二人しかいない。
「これ」
『え。…個別にプレゼントくれるの?』
手のひらサイズの包装された袋を受け取って、はきょとんとした顔をした。
開けても良い?と聞かれて、轟は表情を変えないまま、こくりと頷いた。
『わぁ、ペンギンのネックレス』
「…水族館で見てたろ。本当はあの日に渡したかったんだが」
不慣れで、タイミングがわからなかった、と。
轟が少しだけ俯いて、呟くようにそう言った。
ありがとう、と。
が笑顔になる。
轟はそんな彼女の綻んだ顔を見て、無意識に。
片手での頬に触れた。
「…なぁ」
『…どうしたの?』
「もう泣いたりしてねぇか」
少しだけ腫れているように見えるの両瞼。
あからさまではなく、うっすらと変化している彼女の涙袋を親指で優しくなぞって、轟が問いかけた。
『ーーー……もう?』
が、つい最近「泣いた」時のことを思い出し、ハッとした。
『大丈夫。文化祭の時は、その…ちょっと楽しくて』
「…楽しそうな涙じゃなかったけどな」
『遠くからじゃ見えないでしょう。暗かったし』
「お前の瞳は暗闇で光るから、見間違えたりしねぇよ。なぁ、お前…何か辛い目にあってねぇか。どんな状況か分からないが、話を聞くことはできるから」
俺に話してくれないか。
轟が彼女の頬に手を置いたまま、問いかけた。
何かを疑ってかけているのではない、心配そうなその温かい声色を聞いて、が轟から視線が外せなくなった。
『……わ、たし』
突如。
の携帯電話が鳴った。
ハッとして、は轟の片手を自分の手で避けると、轟に背を向けて着信を切った。
『ごめん、話の途中でーーー』
振り返った彼女の身体を。
轟が優しく抱きしめた。