第38章 夢の一端
「お前、大丈夫か」
『……顔色、そんなに良くないですかね』
「良くはないな。それ以上に覇気がない」
どうした、と。
相澤は問いかけて、さらに騒がしくなってきた他のクラスメートたちを一瞥した。
「……なにか、立て込んでるのか。毎週のように出て行っては、戻りが遅い」
『……。』
彼女が公安からの差金でこの場に存在していることを、一部の雄英教師達は知っている。
担任の相澤はもちろんのこと、オールマイト、そして根津校長がその事実を知っている。
しかし、あまりにも限られたメンバーだ。
はっきりと公言されてはいないものの、彼女が公安のエージェントであることを察している相澤は、人一倍彼女の一挙一動に気を配ってきた。
彼女はエージェントであると同時に、大切な生徒でもある。
最大限のフォローをしようと思っていた。
外出願という形では彼女の動向を伺うことができないため、緊急時に備えて、という名目で、雄英を出入りする際は、相澤の個人連絡先へ一報を入れるように言付けてあった。
彼女が何をしているのかは、一切知らない。
『……先生』
が俯いて、相澤に問いかけた。
『先生は、私が「除籍された」ことをご存知ですか』
「………は?」
突然の問いかけに。
相澤はしばらく思考して、答えた。
そして、知り得る事実のみを伝えた。
「そんな通達は来てない」
『では、まだ私がここに居続けるとお思いですか』
「そのはずだが、違うならまだ正式書面が来てない。お前の立ち位置は何も変わってない」
『……。』
は何かを思案して、口を開こうとして、何かを話すのをやめてしまった。
『…そうですか。体調は大丈夫です。少し考えることが多くて』
「……今日ぐらい頭を休めたらどうだ。お前と騒ぎたい連中があっちにいる」
「!相澤先生!プレゼント交換しようぜ!」
「俺はいいよ。何も持ってきていない」
「!何買った?俺絶対お前の手元に来る自信ある!」
「上鳴のその自信はどっから来るんだよ」