第36章 影に咲く向日葵
期待してしまう。
「そうなんだ。残念ながら俺はまだ信用を勝ち取れていないよ」
そうであってくれと思ってしまう。
『そう。かわいそうに。いつまで監視されてるの?』
君はそんな人ではないと。
君は正しい人であってほしいと。
「わかんないなー…は監視されなかったの?雄英生なのに」
ありもしない彼女の潔白な証拠を血眼になって探しては。
『外典くんが止めてくれた。ありがたい』
「じゃあ、自由なんだ」
『うん』
『ここにいる時は、何ものにも縛られない。胸の奥がすっとする』
彼女が
敵だという動かない証拠ばかりが
手元に集まってきてしまう。
「この前の告白だけど」
監視カメラも盗聴器も。
どうだってよかった。
ただ聞きたかった。
君の本心を。
「もしかして、迷惑でしかなかったかな」
山荘の人通りのない渡り廊下。
彼女が立ち去ろうとする背中に問いかけた。
「水族館、俺とも行ってほしい。君が楽しそうにする姿がもっと見たい。君ともっと一緒にいたい。これは俺の本心だよ」
彼女は立ち止まって、俺を見た。
何かを探るような彼女の視線に、俺は答えを探そうと、彼女の一挙一動に目を凝らした。
『…迷惑なんかじゃない』
「返事をもらえなかったのは、この解放活動のせい?」
『……』
「君が思い描く未来に、俺はいないのかな」
何年も、何年も。
君に焦がれた。
君を思い起こさない日などないほどに。
「個性、思いっきり使いたかったんだね。そんな悩み、知らなかった。気づかなくてごめん。親友なのに、君が見えてなかった。もっと早く、君を見つけるべきだった」
何も言ってくれなかった。
何も教えてくれなかった。
他に、俺が知らないことがあるのなら。
教えてよ。
これからは絶対に。
君のSOSを見逃したりしないから。
そう言って、なぜか。
ぼやけてくる視界の中で、なんとか君を見続けた。
「ーーー…同じ、夢を見てると思ってた」