第36章 影に咲く向日葵
お腹痛いの、ヒミコちゃん。
彼女はそう言った。
トガヒミコはぽかん、と口を開けて、何かを考えた後。
それは大変、わかったよ!と大袈裟に頷いて、彼女の側からいなくなったかと思うと、片手にお湯を詰めたペットボトルを持ってきた。
「あったかくしよ!お腹なでなでして、カァイイカァイイしてあげるね」
『ありがとう』
談話室のソファで横になり、貰ったペットボトルを下腹部に乗せて。
彼女がため息をついていた。
そんな彼女が横たわるソファにくっついて、トガヒミコが床に座り込み、ジッと彼女の横顔を見つめて。
なぜか幸せそうに笑っていた。
「……出てっちゃうの、もったいないね」
『もったいなくない。飲もうとしたら絶交するよ』
「えぇえ、ウソ!!ウソだもん、飲まないよ!!」
だから早く元気になって、と。
トガがそんな言葉を口にした。
外典も、トガもいない時。
彼女の隣を占有しているのは荼毘だった。
彼が彼女に声を荒げているところは、あれ以来一度も見ていない。
「ねみぃ…肩貸せ」
『重い』
一日中、気だるげな荼毘は。
彼女の肩や、膝を借りて眠るのが好きなようだった。
あまりにも。
毎日が自然に過ぎていく。
敵にが絆されたというのなら、あまりにもうまくいきすぎている、プロヒーローホークスの潜入捜査。
それどころか。
『ホークス』
「…やぁフェニックス。どうしたの?」
『次の定例会議に呼ばれた?』
「………いや?定例会議ってものがあるんだ」
『月に一度、幹部とその補佐が集まる。キミも来るかと思ってた』
「君は出席するの?荼毘と」
『呼ばれてる。欠席しようかと思っていて。キミも忙しいだろうから、一緒にサボらないかって企んでた』
彼女はあまりにも。
多くの情報を寄越してくれる。