第36章 影に咲く向日葵
を敵認定する。
暗号を使って行った公安への初回報告。
ーーー雄英に一刻も早い通達を
しかし、公安から返ってきた返答は、「ノー」だった。
それもそうだろう。
そもそも、彼女は雄英に、敵連合のスパイを探すために送り込まれたのだ。
敵側に彼女がいる以上、その捜査結果は、今となっては何の意味も持たない。
雄英のスパイが誰かわからない以上、ホークスが敵側に潜伏した途端、彼女を追い出す通達が行くのはあまりにも不自然すぎる。
ーーー比較的速やかに「フェニックス」の排除を
そんな指示が降りてきた。
彼女のヒーロー名だったはずの言葉の羅列が、今は。
彼女のヴィラン名として公安に知れ渡っている。
来る日も来る日も、敵の観察を続ける。
彼女の行動パターンは単純なものだった。
平日は雄英へ。
週末は山荘へ。
なぜか公安除籍後の行動制限の勧告が雄英側に不通知となっていたため、改めて行動制限の通知を出す必要性が生じたが、これもまた時すでに遅い。
今再度通知を出しては、潜入し始めた俺の存在が悪目立ちしてしまう。
もはや彼女の行動を制限する術を、公安は持っていなかった。
「、来るのが遅い!何してたんだ」
『水族館へ』
「水族館…?誰と」
『轟くんと』
彼女が土曜の昼頃に来るから、その頃になると幹部メンバーの外典が山修行から降りてくる。
その日は待っても待っても彼女が来ず、外典が苛立っていた。
「轟…?エンデヴァーの息子か。お前、何勝手に他の男と会ってるんだ!!」
異常な執着を見せる彼はきっと。
個性で自分を打ち負かした彼女が、欲しくて欲しくて堪らないのだろう。
『キミの許可なんて必要ない』
彼女はいつも。
彼の好意を突っぱねて、とっとと山荘の中に入ってしまう。
「ッあ……おい待て!」
「外典様、リ・デストロがお呼びです」
「っあーー…!今行く!」
外典がいないタイミングを見計らって。
必ずと言っていいほど、トガが彼女に接触していた。
「ちゃんこんばんは!ねぇ、チウチウさせて!」
『こんばんは。今日は調子が悪いから、また明日ね』
「えー、明日はくれるの?ちゃんの血!」
『んー……できれば来週がいいけど』