第35章 犯罪者の手記
「ホークスとどこで知り合ったのか、一切聞いても答えなかった。どうして今日になって話す気になった?つれねェのも大概にしろよ」
を引き止めるために掴んだ彼女の手を。
荼毘は力一杯握りしめて話さない。
『…荼毘、いたい』
「おまえ、何考えてる」
刺すような荼毘の視線。
笑わずに問いかけてくる彼の姿を見て。
は閉口した。
「ホークスが来て急に饒舌になった。敵と話す気は起こらなくてもヒーローと話す気はあるってか?何様だよ…!何を聞いてもイエスノー程度しか答えねぇテメェが、なんであいつのことはベラベラ喋る」
『…そんなことない』
「公安に捨てられたんだろうが」
は荼毘の言葉を聞き、また押し黙ってしまった。
「捨てられて、否定されて、制限されて……ならせめて個性が思いっきり使える場所に来たかったんだろ?自由になりたかったんだろ、だからこっちに来たんだろ!なのになんだよその面は…!表舞台が懐かしいか?帰りたいなんて思ってねぇよな!思ってんならお気の毒、おまえはもうやり直せないんだよ!ここで俺たちと踊るんだ!」
お前は自分が知らねぇだけで
根っからの敵だろ、と
この部屋を飛び出した直後。
扉に一枚挟んできた剛翼に、荼毘の声が響いた。
(……そうか。だから、ここにいるのか)
彼女には何の非もない作戦の最後。
彼女は、公安から除籍された。
「個性」が危なすぎるという危機感から排された。
けれど、その公安の選択は誤りだったのだろう。
抑圧された思いの結果。
彼女は今、ここに立っている。