第35章 犯罪者の手記
ホークス、入って大丈夫だぜー。
トゥワイスのそんな平和ボケした声に呼ばれて、ホークスがまた部屋の中に戻ってきた。
「おまえら、何喧嘩してたんだよ」
ホークスがどうやって聞き出そうか思案する間もなく、トゥワイスが率直に、仲間を心配して声をかけた。
「関係ねぇよ」
からコートを返された荼毘が、また荒々しく、どこか苛立った様子でコートを見に纏った。
大きすぎるサイズの白Tシャツを着たの左腕には、恐らくは荼毘が巻いてやったらしい包帯が巻かれている。
『服、ありがとう』
「無駄に怪我してんなよ。怪しまれんだろ、そんな噛み傷」
怪しまれる、というのは。
恐らくは雄英の生徒達のことだろうとホークスが推察した。
荼毘は会話を聞かれていることが気に食わないのか、トゥワイスとホークスを睨め付けた。
「で?仲良く何してんだトゥワイス」
「え?何してたんだっけ?」
「見学です」
「そうそう!ホークスに山荘を紹介してた」
「お優しいことで。とっとと別の部屋へ行きな」
『私も戻る』
荼毘の前を通り過ぎて出入り口へ向かおうとしたの片手を、荼毘がパシッと掴んだ。
グイグイとその手を引き、荼毘がソファへと腰掛け、強引にを隣に座らせた。
その様子を、苛立ちながらも黙って見ていたホークス。
そんな彼を一瞥して、荼毘がまた厄介払いをするように声を発した。
「出てけ」
「んーと……荼毘、女の子には優しくしてやれよな」
「とっとと出てけっつってんだ」
徐々にまた苛立ちを声色に乗せる荼毘を見て、いつものことと言わんばかりに、トゥワイスはケロッとした声でホークスに話しかけてきた。
「二人にしろってさ。行こうぜ」
「…二人は恋人か何かですか?」
「いや?荼毘の片想い」
ガンッと荼毘が目の前のテーブルを蹴り飛ばした。
トゥワイスはホークスの手を引き、一目散に部屋から飛び出した。
後ろ髪を引かれるように、ホークスは飛び出した部屋の扉が閉まるのを、じっと身が裂かれる思いで見つめていた。