第4章 死ぬ気で鍛えろ
まるで、危険物から他の生徒達を守るように。
体育館の一画を高い塀で区切り、担任と、転入生が訓練を始めた。
「うぉっ、あつ!」
「まばゆい☆」
突如、煙突のようになっているその一角の上部から、フラッシュライトを焚いているかのような光が漏れ出して、生徒達の視界を奪い去った。
広々とした体育館が、一瞬で熱気を帯びた世界に早変わりしてしまい、訓練中だった生徒達は、一気に発汗し始める。
「なんっだ、これ!!あつー!!」
「セメントス、他ノ生徒ノ訓練ガ進マナイ。塀ノ上部モ閉ジナケレバ」
「エクトプラズム、これイレイザー大丈夫なんでしょうか!?塀の中はこれよりもっと暑くてたまらないはず…上部を閉じたら、それこそ蒸し風呂状態で、訓練どころじゃありませんよ!」
暑い暑いと騒ぐクラスメート達を横目に、エクトプラズムの分身相手に暴れ回り続けていた爆豪は、一度動きを止め、湿気を帯び始めた自身の掌に気づき、笑った。
「はっはァ!なんだ、この居心地良いサウナ空間はよォ!!ンなもん作れんなら、はなっから作れや雄英!!!」
「いや、ちげーって爆豪!これ、たぶん」
の、個性。
切島がそう言い終わる前に、煙突状に固められていた壁にヒビが入った。
そして。
高い高いコンクリートの壁が、爆散した。
「うぇえ!?」
「ふせろ!!」
「さぁさぁ、みんな!!」
コンクリートの流星群を背にして、ミッドナイトがにっこりと笑い、ムチを振った。
そんな恍惚の表情を浮かべている彼女が発した言葉の続きは、「下がって」でも、「伏せて」、でもなく。
「ほらほらぁー!!下敷きになっちゃうわよー!思う存分逃げやがりなさーい!!」
「守ってくれねーのかよォ!?」
絶叫した峰田の頭上に飛来してきたコンクリを飯田が蹴り飛ばし、あわあわとして突っ立ったままだった口田を緑谷が抱え、飛び退いた。
間一髪。
肝を冷やした生徒たちを、教師陣が見下ろし、告げた。
「圧縮訓練って言ったわよね?命を守る術っていうものは、考えたって思いつかないこともあるの。命の危機にさらされた時に、閃くものだってある」