第33章 ティータイムの後で
「」
背後から轟の声がした。
は身体だけ先に後ろを振り返り、最後には顔も轟の方へ振り返った。
『なぁに』
口々に彼女の名前を呼ぶクラスメイト達。
それぞれに推したい料理があるらしく、「これ食べろよ」「これ美味しいよ」と遠くから手招きしては、早く来いよと彼女を急かす。
『心操くん、じゃあまた』
「っ……あぁ。明日休みだけど、明日も朝、来るだろ?」
はクラスメイト達の方へ歩みを進めながら、顔だけ振り返って答えた。
『明日は先約が』
後夜祭も終わり、それぞれの生徒が寮へと帰る。
一人、二人と人が欠け、轟が想像していた通り、最後まで残ったのはだった。
一人でいたくないのだろう。
そんな日、彼女は誰に何をお願いするでもなく、人の輪の中に留まり続ける。
もっと一緒にいてほしい。
そう言えば、クラスの誰だって彼女の望みを喜んで聞き入れただろう。
それほど、の存在はクラスの中で大きくなっていた。
それほど、という少女は、周りへの影響力を持っている。
『轟くんは何時に寝るの』
ソファに深く沈み込みながら、はひざかけを自身の身体にかけて、問いかけた。
「おまえが寝るまで寝ない」
広いリビングで。
仲睦まじく、わざわざ隣の席へと轟が座った。
は気を利かせてなのか、轟の膝にも自分の膝掛けを半分かけてくれた。
『ぬくい』
「ありがとう」
何をするでもなく。
彼女と他愛無い話をし続けた。
彼女が小さなあくびをするから、寝るか、と問いかけたら、まだ寝ない、と、眠そうな目を擦って首を横に振られた。
「眠いんだろ。なんで無理に起きようとする」
『もったいない』
「……」
楽しい一日の終わり。
まだ、終わらせたくないのだと、轟は悟った。
ライブの途中。
涙していた彼女を思い浮かべて。
「…疲れただろ。寝てろよ。隣にいるから」
『……ねない』