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イカロスの翼【ヒロアカ】

第33章 ティータイムの後で




ありがとう、と、は躊躇いなく、轟の手に持つクレープを一口食べた。
固まって、無言になる轟に。
は『はいどうぞ』と自分のクレープを口元に持ってきてくれる。
無言のまま。
の手に持つクレープを食べた。


『美味しい?』


至近距離で彼女が問いかけてくるから。


「……あぁ」


味なんて、よくわからないままに飲み込んだ。


『……あ、りんご』
「…どうした?」


思い出した、と、が壊理を見つめて呟いた。


「あ、さん。僕も用意しようと思ってたよ」
『りんご?』
「うん、他の材料も。食紅だけ足りないんだけど、持ってたりしない?」
『ある。一回寮に戻ろうか』


突然、緑谷とが寮に戻ると言い出した。
それには黙っていられず、麗日が「轟くん連れてって!!」と叫んだ。
突然のシャウトに、緑谷が狼狽しながらガクガクと激しく頷いた。


「エリちゃん、30分くらいで戻ってくるから、少し通形先輩と遊んで待っててくれる?」






























クラスの輪から抜け出して、三人でハイツアライアンス寮へ戻ってきた。
りんご飴の経緯を話すと、なぜか巻き込まれた轟は、「それいいな」と二つ返事で飴作りを手伝ってくれた。
轟の冷気により、一瞬でりんご飴が完成した。


「緑谷、もうすぐ戻るのか?」
「うん、飴は帰る時に渡そうと思うけど、それまでは一緒に見て回ろうかな」
「…そうか。と、少し二人で見て回っててもいいか」
「え?う、うん!いいと思う!いいと思うよ!」
『そんな頭を激しく振らなくても』


みんなでダンスの練習をしていた、寮の玄関先。
轟と二人で、文化祭のパンフレットを覗き込む。


『…ぜんざい屋さん』
「食べたいのか。行くか」
『ううん、甘いものばかり悪いよ』
「遠慮すんなよ」


行こう、と。
轟が優しく声を発して、に笑いかけた。
その脳裏には。
体育館で見てしまった、彼女の泣き顔が焼き付いて消えないままだ。










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