第33章 ティータイムの後で
体育館全体を使って、A組の生徒達が駆け回る。
麗日の無重力体験、飯田のロボットダンス、耳郎の熱を帯びた歌唱、切島が氷を削って散らせるダイヤモンドダスト。
これらの演出を、切島、轟、、甲田、瀬呂の五人が考えた。
クラスメイトの全員が持てる力の全てを、エンターテイメントに活かそうと決めた。
『…すごいな』
階下の熱狂を見て、ただ、すごいな、とは思った。
(…これが文化祭)
彼女にとっては、初めての経験だった。
一年に一度のお祭り。
学生の特権。
(…一年に、一度か。あぁ、そうか)
きっと、おそらく。
自分にとっては。
これは、一生に一度の出来事だ。
『…まるで、夢みたいだ』
(すげぇな)
階下の熱狂を見て、ただ、すごいな、と轟は思った。
「…文化祭、頑張ってよかった」
「まだ気が早いぜ!ラストサビ!」
(…やっぱり、の個性綺麗だな)
会場を瞬き彩るイルミネーションのような彼女の白炎。
照らしてほしいと提案したのは、轟だった。
(…、楽しんでんのかな)
体育館の端と端。
の向かい側に位置する轟が、彼女の表情を盗み見た。
文化祭を知らないと言っていた彼女が、どんな表情をしているのか気になった。
どんな笑顔を見れるのかと気が急いだ。
自分と同じように。
暗闇から舞台を華やかに彩る彼女は。
「ーーーーーー。」
役割を果たしながら
涙を流して泣いていた。