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イカロスの翼【ヒロアカ】

第32章 変容




(…かといって、どうしたいんだ)


自分に、周りに、何に対しても執着しない。
轟は、そんな彼女を横目で見ながら思案する。


(…執着、されたいのか。いや、違うな…)


自分の感情の落とし所がわからずにいると、がおもむろに冷凍庫を開き、アイスクリームを取り出した。
そのアイスの容器には、しっかりと「」と名前がマーカーで書いてあるようだった。
蓋にも本体にも書くあたり、誰にも取られまいとする姿勢が見て取れる。


『轟くんにもあげる』
「…あぁ、ありがとう」


日本茶と、アイスクリーム。
不思議な組み合わせになってしまうが、はそんなこと気にしないらしい。


「…おまえ、よく出かけてるよな。いちいち外出届出してるんだろ?」
『ん?……うん、出してるよ』
「なんだその微妙な間」
『出してる出してる』
「どこ出かけてるんだ」
『んー。ほとんど買い物とか、散歩。植物園行ったり、水族館行ったりしてる』
「え」


植物園、水族館。
楽しげな響きに一瞬、轟の肩が揺れた。
その動作にが気づき、アイスクリームにむけていた視線を、轟に移した。


「…誰と?」
『一人』


返答を聞き、ほっとする轟。
その表情を見ていたが、少し首を傾げた。


『楽しいよ、結構。魚とか。見るのも食べるのも好き』
「植物園なら中学の社外実習で見たことあるが…水族館は行ったことねぇな」
『楽しいよ。静かで落ち着く』
「……普段、どのくらい遠くに遊びに行ってるんだ?全寮制になってから、門限厳しいだろ。俺も見舞いに行きたいんだが、遠くて許可が降りない」
『実際どこへでもいけるよね。許可が降りて外に出られたら、どこに行ってもわからないからね』


真面目だなぁ、と。
は半分こしたアイスクリームの乗った深皿を轟に手渡して、そう返答した。


『遠くに行っても、それらしい時間以内に帰ってくればいい。私は飛べるから、時短できるしね』
「…先生に嘘ついて出かけてんのか。それに、どんな短時間の外出でも教員の引率がつくだろ」


ふーん、という曖昧な彼女の返答に、轟が首を傾げた。




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