第32章 変容
「!!ギターは!?ギターはどう!?興味ない!?あるよね!音鳴るもん、たーのしーいぞー!」
「必死か」
爆豪がようやくを解放すると、耳郎の冷ややかな視線も意に介さず、すぐさま上鳴がギターを片手に駆け寄ってきた。
はまた真剣な眼差しでギターを見つめて、『鳴らしてみて』と上鳴に頼んだ。
精一杯格好良いポーズを取り、上鳴がギターを一閃なぞり、奏でる。
デン、ディロロロン……
不愉快な不協和音が響いた。
「イケメンに生まれたかった!!」
ワッと顔を押さえて、上鳴が膝から崩れ落ちた。
散々な初心者を見て、耳郎が必死に笑いを堪えている様子を、常闇がジッと見つめている。
さん、キーボードはいかがですか?と八百万がプリプリと花を飛ばしての側へ寄っていく。
その様子を見ていた切島が呟いた。
「なんか、最近よく笑うようになったよな」
雰囲気が柔らかくなったわけではないが、彼女の感情が表情から読み取れるほどに、彼女の外側に現れるようになってきている。
クラスに馴染めてよかった、と。
切島が1人で納得して、じぃんと熱い気持ちになっていると、またバタバタと慌ただしい音を立てて、部屋着姿の轟が戻ってきた。
「…っ…はぁ……やるか」
「走ってきたのか。いいのにそんな気つかわなくて」
「いや、毎日毎日遅れて…迷惑だろ。本当悪い」
「羨ましくはあるけど迷惑ではねぇよ。告白する方もすげー勇気出して呼び出してんだろうからさ、しっかり向き合ってやったほうがいいと思うぜ」
名前も知らねえ誰に好かれていようとさ、と。
切島が屈託のない笑顔を轟に向けて、そう言った。
「演出隊ー!あと1分でミーティング再開すんぞ!」
ふ、と。
轟がに視線を向けた。
はバンド隊に囲まれて、常闇のギターを肩からかけさせてもらっている最中だった。
『こう?』
「いや、そうじゃない。左手がここだ」
『ん?ここ?』
「違う。……その……こっちだ」
常闇が一瞬躊躇い、「すまない」と断りを入れつつ、の左手をホームポジションに置いた。
右手の位置も変更し、準備万端になったところで。
一閃、奏でた。