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イカロスの翼【ヒロアカ】

第28章 学生気分




(…調子悪ぃ)


長風呂からあがってからというもの。
なぜか、息切れがする。
動悸が収まらない。
気分は沈んだまま、せっかく緑谷が補習前に用意してくれた蕎麦もうまく喉を通らなかった。


(のぼせたのか)


それにしてはずいぶん時間が経っている。
それになんだか。


「、下降りてくんの珍しくね?寝たと思ったわ」
『話し合い、しなきゃなのかと』
「もう決まったぜ!ダンスにバンドにクラブだぜ」
『…出店?』
「なわけ!」
『誰の案?』
「轟!なっ!」
「…あぁ」


なんだか。


『ダンスにバンドにクラブってなぁに』
「…動画、ある」


と目が合わせられない。


(…早く寝よう)


新手の風邪だろう。
結論付け、煎茶をいれようとしていた手を止めた。
電気ケトルですでに沸かしてしまったお湯をシンクに捨てる。
流れていくお湯から立ち上る湯気をぼんやりと眺めていたら、いつの間にか隣にが立っていた。


「お」
『お湯ほしい』


両肩が震えるほど驚いた。
びっくりしたせいか、一層動悸が激しくなる。


「…あ、悪い。もうない。もう一度沸かすか」
『ありがとう』


電気ケトルに水をいれて。
セットしなおす。
その轟の横で、はこんな夜にコーヒーパックの詰まった専用棚をあさり始めた。
眠れなくなるだろ、と言いたくなって。
自分も煎茶を飲む準備をしていたことを思い出した。


「…コーヒーじゃなくて、お茶にしておけよ」
『緑茶ってカフェイン入ってないの?』
「…コーヒーより薄そうだろ」
『そうかな』
「うん」


(…湯、沸かねぇな)


こんなになかなか。
遅かっただろうか。
そう思ってしまうほど、なぜかこの時間が気まずくて仕方がない。
一心に電気ケトルを見つめる。
視界の隅で、の長い髪の毛先が揺れている。
ノートPCから流れてくる音楽に、身体を揺らしているようだ。


『轟くんは踊るの』
「…どうだろうな。たぶん苦手だ」
『バンドするの』
「…それも苦手だ。は踊るのか」
『目立ちたくない』


はずかしい、と。
が小さい声でそう言った。
轟は彼女の表情に視線を奪われて、数秒、言葉を失った。
パンっというケトルの湯が沸いた合図の音を聞き、轟はハッとした。


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