第28章 学生気分
文化祭がLHRの議題にあがった日の夜。
インターン組の緑谷、麗日、蛙水、切島、は、夜19-20時での補習を受けていた。
「はーつっかれたー」
「デクくん、ちゃん、エリちゃんに会えるの楽しみだね!」
「うん。エリちゃん元気だといいな」
教員棟に配置されている補習室から、寮へと戻る。
緑谷とに会いたがっていると相澤が口にした一人の少女の話題を、5人で口にしながら玄関へと足を踏み入れると、文化祭の出し物について話し合いを続けていた他のクラスメートたちの姿がまだそこにあった。
「あ、おっかえりー!出し物決まったよー!」
インターン組の帰宅をいち早く発見した葉隠の声に反応し、轟がじっと玄関口を見つめる。
靴箱に靴をしまっていたの身体がリビングの方へ向き直るのと同時に、轟はパッと視線をまた机上のノートPCへと戻した。
「話し合いまとまったんだ!何をするの?」
「ダンスー!」
「轟発案だぜ」
「え、轟くんがダンス?意外や!」
『ただいま』
「お疲れー!」
クラスの輪に加わった緑谷、麗日、蛙水、切島。
しかし、そんな中は、女子棟のエレベーターへまっすぐと向かっていってしまう。
(…あ)
視線を向けないようにしながらも、視界の隅で彼女の姿を捉えていた轟は、エレベーターへと吸い込まれていく彼女の姿を見送った。
「すごく良い案だね轟くん!がんばろう!」
「…あぁ」
クラスメートたちに話しかけられる間も、轟は一人、心ここにあらずといった心境だ。
リビングの喧騒が、遠くのノイズに聞こえる数十分間。
そのざわつきの中から、小さく軽いベルの音が聞こえてきた。
その音がエレベーターの音だと知っている轟は、また視線をエレベーターへ向けた。
部屋着に着替えてきたらしいが、エレベーターから降りてくる。
轟の視線に気づいたのか、はスッと視線を轟の方へと向けた。
すると、パッと轟は視線をそらし、彼女から距離をとるようにキッチンの方へと向かっていってしまった。