第28章 学生気分
「轟よぉ、と付き合ってんだろ」
その日の夕方、男子大浴場。
峰田が突然、爆弾を投下した。
(聞くのか峰田!?)
(誰もが思って口にしなかったその話題を!?)
(文化祭前にやめろ、と準備期間で急接近する予定の俺の夢が壊れる!!)
頭を洗っている途中だった切島、緑谷、上鳴が、突如バッシャァと頭上からシャワーをぶちまけ、湯船に浸かっていた轟と峰田、爆豪の近くへ飛び込んでくる。
みんな、危ないからお風呂場で走るのはやめるんだ!と静止するような声を発してみせた飯田はといえば、誰よりも急加速して湯船に駆け込もうとした結果、大浴場の床を盛大に転げまわっている。
「バカデクなに飛び込んできてんだ殺すぞ!!」
「うるっせーー!オイラと轟の男同士の会話、邪魔すんじゃねーよ!!」
「ハイ!俺も漢、漢!聞きてえ轟!!」
「聞きたいけど聞きたくねぇええいいよ言っちゃって!!」
「待て、待つんだ轟くん!!今そっちへ行くから!!くっそぉ俺の足め、急げ!!」
「飯田くん加速は危ないよ!!ゆっくり!!」
長湯していた轟は、なぜか自分を取り囲むように湯船に集まってきた級友たちを眺め、答えた。
「付き合ってねえし、狭ぇ」
「付き合ってねぇのに仲良すぎだろぉがよ!!なんだ今日のLHR、甘酸っぱすぎんだよおまえらの座席!!」
「え」
轟が自分の左腕を自分の鼻の近くへ持っていき、くんくんと匂いを嗅ぐ仕草をした。
「臭いか。悪い、気を付ける」
「汗くさ臭じゃねぇんだよ、そんなの全男子高校生の課題だろぉが!!紛らわしいこと言ってごめんって!!」
「じゃあなんの匂いだ」
「臭いはもうどうだっていいんだよ!!と距離がちけぇって言ってんだ!!」
オイラは宣言するぜ、この文化祭で絶対に彼女を作る!!
男子大浴場のみならず、女子大浴場にも響き渡る峰田の大声を聞き、女子風呂で湯船に浸かっていた芦戸がきゃっきゃと笑った。
「峰田さ、彼女作る前に好きな人作らなきゃだよね」
「ねぇねぇ、ちゃん!轟くんはああ言ってるけどほんとに付き合ってないの?」
湯船でのんびりとしているの隣。
透明に一部分だけお湯が張られていないその湯船の不自然なスペースに、葉隠がいるのだろうと想像し、は顔をそちらへ向ける。